SiCパワーデバイス|基礎編

SiC-SBDとは-信頼性試験について

2016.11.29

この記事のポイント

・ロームではSiC-SBDの信頼性について、標準的な半導体デバイス向け規格に準じて試験を行い評価している。

半導体デバイスの評価を行う際には、電気的および機械的仕様と性能はもちろん、信頼性も重要な要素になります。特に、パワーデバイスは大きな電力を扱うことが前提であり、十分な信頼性を備えている必要があります。

SiC-SBDの信頼性

SiCは半導体材料としての歴史が浅いこと、Siパワーデバイスに比べるとどうしても使用実績が少ないことから、その信頼性レベルが十分に認知されていないかも知れません。新しいもの、実績のないものは、食わず嫌いされる傾向がありますが、ここで示すデータを確認していただければと思います。

ここでは、SiC-SBDの信頼性試験について説明します。

これは、ロームのSiC-SBDの信頼性試験データです。まずは、どんな項目があって、どんな条件なのか眺めてみてください。

iC_2-6_rel

半導体の信頼性の検討や実際に評価を行ったことのある人であれば、見慣れた規格と条件だと思います。基本的にはEIAJ ED-4701の試験条件に則った試験を行っています。ちなみに、この表ではEIAJ ED-4701となっていますが、EIAJ(日本電子機械工業会)は2000年にJEIDA(日本電子工業振興協会)と合併し、JEITA(電子情報技術産業協会)になっています。規格の中にはまだEIAJの名称が残っているものがありますが、現在ED-4701はJEITA ED-4701が正式名称です。右に参考としてJEITA ED-4701/100Aの表紙を示します。

話を戻します。JEITA ED-4701は、「半導体デバイスの環境及び耐久性試験方法」という規格で、産業および民生の半導体評価のための試験方法が示されています。日本国内では一般的な規格です。つまり、評価が実施されたロームのSiC-SBDは、私たちがよく知っているSiのトランジスタやICの信頼性試験と同じ試験において、十分な信頼性が確保されていることが上記の信頼性データから見て取れます。

SIC_2-6_ED-4701_100A

ところで、SiC-SBDに関して、dV/dtまたはdI/dtに関係する破壊モードがあるという話を聞いた方がいるかと思います。dV/dtに関しては、大きなdV/dtが印加された場合にSiC-SBDの外周構造が破壊されるモードです。しかしながら、ロームのSiC-SBDは、現在までの調査では50kV/μs程度のdV/dtに対しても、この破壊モードは確認されていません。

dI/dtに関しては、Si-FRDではdI/dが大きい場合にリカバリ電流Irrが大きくなり、電流集中によって破壊するモードがあり、同様のモードが懸念されるということだと思いますが、SiC-SBDではリカバリ電流が非常に小さく、このモードは起こりにくいと考えられます。

以上ですが、SiC-MOSFETに関しては、別の機会にデータを提示したいと思います。

(2016年10月現在)

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