SiCパワーデバイス|基礎編

SiC-SBDの進化

2016.08.30

この記事のポイント

・ロームSiC-SBDはすでに第3世代まで進化している。

・第3世代品は、サージ電流耐量とリーク電流を改善し、第2世代で成し得た低VFをさらに低減した。

ここまでは、SiC-SBDを理解するために、Siダイオードを比較対象として特性の説明をしてきました。その中で、SiC-SBD自体も第2世代へと進化し、性能が向上しているという話をしてきましたが、第3世代が発表されたこともあり、ここで、SiC-SBDの進化についてまとめて、現状、実際に入手可能なSiC-SBDについて整理したいと思います。

電源ICなどでは、アーキテクチャや搭載する機能によってメーカー色が出やすいですが、ダイオードやトランジスタといったディスクリートデバイスは、機能そのものにちがいはないので、ほぼ共通の特性項目を直接的に比較して、部品選定をすることになります。その際に、どんなバリエーションがあるか知っておくことは、設計時間の短縮にもつながると思います。

SiC-SBDの進化

ロームのSiC-SBDは現状、第2世代が主流で、すでに50機種近くが量産供給されています。下のグラフは、第1世代から第3世代の順方向の電圧と電流特性(VF vs IF)、そして順方向電圧とサージ電流耐量(VF vs IFSM)を示しています。

SiC_2-4_vf
SiC_2-4_IFSM

第2世代SiC-SBDは製造プロセスの工夫により、リーク電流やtrr性能を従来品と同等に保ちながら、VFを約0.15V低減しました。これにより、VFによる導通損失を改善しました。

第3世代では、サージ電流耐量(IFSM)の向上とリーク電流(IR)の改善を求め、JBS(Junction Barrier Schottky)構造を採用しました。JBS構造は、基本的にIFSMとIRに効果がある構造ですが、第2世代で実現した低VF特性をさらに改善することに成功しました。Tj=25℃時の代表値は同じですが、Tj=150℃の条件では第2世代よりVFを0.11V低減しています。つまり、高温条件での動作はさらに有利になっています。第2世代と第3世代SiC-SBDの、逆方向電圧VRと逆方向(リーク)電流IRのグラフと、改善項目の数値比較の表を示します。

SiC_2-4_if
SiC_2-4_tbl

さらに、VFの温度特性の理解のために、データシートから抜粋したグラフを示します。左が第2世代品「SCS210AG」、右が第3世代品「SCS310AP」で、どちらも650V/10Aです。第3世代品は、高温時のVF-IF曲線の勾配が急で、同じIFに対してVFが低く、改善されているのがわかります。

vf210_vf310

現状入手可能なラインアップと開発予定

以下は、現状、入手可能な第2世代品と第3世代品です。どちらも、継続的に機種の拡充を行っています。個別の仕様確認などの参照にしていただければと思います。各、データシートはこちらからアクセスできます。

第2世代 SiC-SBD

SiC_2-4_2Gtable

 第3世代 SiC-SBD

SiC_2-4_3Gtable

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SiC-SBDの進化

SiCパワーデバイスの基礎