SiCパワーデバイス|基礎編

SiCパワーデバイスの開発背景とメリット

2016.04.26

この記事のポイント

・SiCはエネルギー問題に対する一つのソリューションとして開発されてきた。

・SiCは損失削減だけではなく、小型化という大きなメリットがある。

前回、SiCの物性とSiCパワーデバイスの特徴を説明しました。SiCパワーデバイスは、Siパワーデバイスを超える高耐圧、低オン抵抗、高速動作を実現でき、より高温での動作も可能です。今回は、SiCの開発背景と具体的なメリットについて話をしたいと思います。

SiCパワーデバイスの開発背景

SiCはパワーデバイスに応用することで、従来のSiパワーデバイスでは実現できなかった低損失な電力変換が可能になることは、先に説明した通りです。これがSiCをパワーデバイスとして実用化してきた大きな理由であることは、すでにお気付きかと思います。その背景には、全世界の課題である省エネルギーの促進があるもの想像の通りです。

低電力のDC-DCコンバータの例では、モバイル化にともない90%を超える変換効率は当たり前になりましたが、高電圧、大電流のAC-DCコンバータは、まだ効率改善の余地があるといわれています。EUを中心とした省エネ関連の指令は、電気/電子機器に待機時電力の削減も含めた省エネを強く要求しているは周知のことです。

こういった状況において、電力変換時に発生するエネルギーの損失を削減することは急務であり、Siの限界を超える物質をパワーデバイスに応用することが必須であったのはいうまでもありません。

SiCパワーデバイスを利用することで、例えばIGBTに比べスイッチング損失を85%削減することが可能です。この例が示すように、SiCパワーデバイスが、エネルギー問題に対する一つのソリューションになることは間違いありません。

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SiCがもたらすメリット

すでに述べたようにSiCを利用することで、大幅なエネルギーロスの削減が可能になります。もちろん、これは大きなメリットなのですが、SiCの特徴である低抵抗、高速動作、高温動作がもたらすメリットについてもう少し考えてみたいと思います。

Siとの比較で話を進めていきます。「低抵抗」であることは単純に損失を少なくすることにつながりますが、同じ抵抗値ということであれば素子(チップ)の面積を小さくすることができます。大電力を扱う場合には、複数個のトランジスタやダイオードをモジュール化したパワーモジュールを使うことがあります。例として、SiCのパワーモジュールではSiに比べサイズを約1/10にすることが可能です。

「高速動作」に関しては、スイッチング周波数を高めることで、トランス、コイル、コンデンサといった周辺部品は、より小さなものを使うことができるようになります。実際に1/10程に小さくできた例があります。

「高温動作」は、より高い温度での動作を許容するので、ヒートシンクなど冷却機構を簡素化できます。

このように、SiCを使って効率を改善する、また、より大きな電力を扱うというアプローチはもちろんありなのですが、現状の電力であればSiC化により大幅な小型化が図れることも大きなメリットになります。直接的な省エネだけではなく、設置場所や輸送など間接的な省エネにもつながる小型化は重要課題の一つです。

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SiCの物性やメリット、SiCショットキーバリアダイオードとSiC MOSFETのSiデバイスとの比較を交え特徴や使い方の違いなどを解説しており、さまざまなメリットを持つフルSiCモジュールの解説も含まれています。

SiCパワーデバイスの開発背景とメリット

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