SiCパワーデバイス|基礎編

SiCパワーデバイスの基礎

2016.04.07

この記事のポイント

・SiCパワーデバイスは、損失低減や高温度環境下での動作特性に優れた次世代の低損失素子。

・新しい半導体だが、車載機器といった高品質高信頼性が要求される市場でも、すでに多くの実績をもつ。

Tech Webの「基礎知識」に、新しく「パワーデバイス」に関する記事を追加していきます。近年、「パワーデバイス」もしくは「パワー半導体」といった表現で、大電力を低損失で扱うことを目的にしたダイオードやトランジスタといったディスクリート(個別半導体)部品に注目が集まっています。その理由は、世界共通の課題である「省エネルギー化」と「小型化」に対応するために、より高効率で高性能なパワーデバイスが必須になるからです。

ところで、最近耳にする「パワーデバイス」というのは、具体的にどのような定義に基づく分類なのでしょうか?おそらく、明確な分類はないと思いますが、イメージとしては、高電圧高電力のAC-DC変換や電力切り替えを目的としたダイオードやMOSFET、そして電源の出力段としてモジュール化されたパワーモジュールなどが該当すると思います。

ここでは、従来のシリコン半導体をベースにした「シリコン(Si)パワーデバイス」と、Si半導体に比べ損失低減や高温度環境下での動作特性に優れ、次世代の低損失素子として期待されている「シリコンカーバイド(SiC)パワーデバイス」に分けて話を進めていきます。SiC半導体はすでに実用領域に入っており、品質信頼性要求が厳しい車載機器にも搭載されています。SiCというと、何かとても大きな電力を扱う特殊なアプリケーションをイメージする方がいるかもしれませんが、多くの身近なアプリケーションで省エネ、小型化に貢献度が高いパワーデバイスです。

SiCパワーデバイス

SiCパワーデバイスに関しては、以下の4つに分けて話をしていく予定です。

  1. SiCとは?
    • 物性、Siとの比較
    • 開発背景
    • SiCのメリット
  2. SiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)
    • Siダイオードとの比較
    • 採用事例
  3. SiC-MOSFET
    • 各種パワーMOSFETとの比較
    • 活用事例
  4. フルSiCモジュール
    • モジュールの構成
    • スイッチング損失
    • 活用のポイント
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SiCは、熱的、科学的、機械的に非常に安定した化合物半導体で、パワーデバイスにとって重要なパラメータが非常に優れています。素子としては、Si半導体を凌ぐ低抵抗、高速動作、高温動作が可能で、送電から実際の機器に至るまでの様々な電力変換におけるエネルギーロスを大幅に削減することができます。

SiC半導体によるパワーデバイスは、2010年*1にSiC-SBD(ショットキーバリアダイオード)とSiC-MOSFETが量産出荷されており、SiCのMOSFETとSBDによる「フルSiC」パワーモジュールも2012年*1に量産となっています。また、すでに第二世代のデバイスが量産されており、加速度的に進化しています。 (*1:ロームによる国内または世界初の量産)

最初の章では、まだSiCになじみの薄いエンジニアの方を前提にした、SiCの物性やメリットといった基礎的なことから始めます。続いて、SiC-SBD、そしてSiC-MOSFETについて、Siデバイスとの比較を交えた特性や使い方の違いなどを解説し、採用事例も紹介していきたいと思います。

フルSiCモジュールは、パワー段として最適化されたモジュールで様々なメリットがあります。特徴に加えて、実際のアプリケーションで具体的な活用ポイントの解説を予定しています。

SiCパワーデバイスは、省エネと小型化に対して非常に有用なので、ここで理解を深め身近なデバイスとして利用できるきかっけを提供できればと考えています。

【資料ダウンロード】SiCパワーデバイスの基礎

SiCの物性やメリット、SiCショットキーバリアダイオードとSiC MOSFETのSiデバイスとの比較を交え特徴や使い方の違いなどを解説しており、さまざまなメリットを持つフルSiCモジュールの解説も含まれています。

SiCパワーデバイスの基礎

SiCパワーデバイスの基礎