Siパワーデバイス|基礎編

トランジスタとは-分類と特徴

2016.07.26

この記事のポイント

・この章では、パワートランジスタとしてバイポーラ、MOSFET、IGBTをピックアップした。

・バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBTの基礎的な特徴を確認する。

今回から、「Siトランジスタ」について説明して行きます。Siトランジスタと一口に言いましたが、バイポーラやMOSFETといったように製造プロセスや構造による分類があります。また、ハンドルする電流や電圧、アプリケーションによっても分類することができます。ここでは、パワーデバイスをテーマに展開していますので、数あるトランジスタの中からパワー系のものを取り上げます。その中でも、近年、大電力を制御するアプリケーションの多くで使われているMOSFETをメインに話を進める予定です。

最初に、基礎的な内容になりますが、トランジスタの分類と特徴について確認しておきたいと思います。

Siトランジスタの分類

Siトランジスタの分類ですが、分類する観点によりいくつもの分類の仕方があると思います。ここでは、少々大雑把ではありますが、構造とプロセス面から以下のように分類してみました。その中で、ここのテーマであるパワー系のところは太字/塗りつぶしになっています。

バイポーラトランジスタとMOSFETには、パワータイプと小信号タイプがありますが、IGBTは元々大電力を扱うために開発されたトランジスタですので、基本的にパワータイプだけになります。

ちなみに、念の為ですが、MOSFETはMetal Oxide Semiconductor Field Effect Transistorの略称で、電界効果トランジスタ (FET) の一種です。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称です。

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Siトランジスタの特徴

バイポーラトランジスタ、MOSFET、IGBTについて、トランジスタの主な検討項目に対する特徴をまとめてみました。

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各項目に対する評価は、代表的な特性を基にしてあるので、個別には合致しないものもあります。全体的な傾向、特徴と考えてください。また、これらのトランジスタの構造と動作原理、代表的なパラメータを以下に示します。

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バイポーラトランジスタ(図はNPNの例)は、PN接合により構成され、ベースに電流を流すことで、コレクタ-エミッタ間に電流が流れます。先の特徴をまとめた表にあるように、駆動に関しては、増幅率、コレクタ電流との関係によってベース電流を調整するなどが必要です。MOSFETと大きく異なるのは、増幅またはオン/オフのためのバイアス電流がトランジスタ(ベース)に流れる点です。

また、MOSFETでは、オン抵抗というパラメータがあり、特に大電力を扱う場合に重要な特性になりますが、バイポーラトランジスタには、オン抵抗というパラメータはありません。世の最初のトランジスタはバイポーラトランジスタなので、表現の順序が逆だと言われそうですが、昨今、特に電源回路においてはMOSFETが主流で、MOSFETから使い始めた方も多いと思いますので、MOSFETを主にさせてもらいます。話を戻します。バイポーラトランジスタのオン抵抗にあたるのはVCE(sat)で、コレクタ-エミッタ間の飽和電圧になります。これは、既定のコレクタ電流を流した時、つまりトランジスタがオンしている時の電圧降下なので、この値からオン時の抵抗を求めることができます。

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MOSFET(図はNchの例)は、ゲートに電圧を印加することによりソースとドレイン間にチャネルができて導通します。また、ゲートは、ソースおよびドレインと酸化膜により絶縁されているので、導通といった意味での電流は流れません。ただし、Qgと呼ばれる電荷が必要になります。

MOSFETについては、あらためて詳細を説明します。

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IGBTは、バイポーラトランジスタとMOSFETの複合構造になっています。MOSFETとバイポーラトランジスタの良い面を利用するために開発されたトランジスタです。MOSFETと同様にゲート電圧制御で高速動作、バイポーラトランジスタの高耐圧でも低オン抵抗という特徴をあわせもっています。

動作はMOSFETと同じように、ゲートに電圧を印加することでチャネルが形成され電流が流れるのですが、MOSFET(Nchの例)は同じN型のソースとドレイン間に電流が流れるのに対し、IGBTはP型のコレクタからN型のエミッタに電流が流れる構造、つまりバイポーラトランジスタと同じになっています。したがって、MOSFETのゲート関連のパラメータと、バイポーラトランジスタのコレクタ-エミッタ関連のパラメータをもっています。

基本動作特性の比較

これら3種類のトランジスタですが、動作特性はそれぞれ異なります。以下は、基本となるIc/Idに対するVce/Vdsの特性です。パワーデバイスは基本的にスイッチとして使われるので、なるべくVce/Vdsが低い条件で使うことになります。これは、利用する回路条件で、どのトランジスタが最適か検討する際の代表的な特性の一つになります。

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【資料ダウンロード】Siパワーデバイスの基礎

Si半導体を用いたパワーデバイスには非常に多くの種類がありますが、このハンドブックでは、主に電源用途のダイオードとトランジスタを中心に基礎的なポイントを解説します。また、回路設計時のトランジスタ選択の手順と決定方法、各特性や特徴を利用したアプリケーション事例を紹介します。

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