Siパワーデバイス|基礎編

ダイオードとは-ショットキーバリアダイオードの特徴

2016.05.31

この記事のポイント

・Si-SBDの特性はバリアメタルによって異なる。

・Si-SBDのIRは無視できないレベルであることを認識しておく。

・熱暴走を起こす可能性があるので十分な熱設計を検証を行う。

Siダイオードの2回目として、ショットキーバリアダイオード(以下SBD)の特徴とアプリケーションに関する説明をします。

Si-SBDの特徴

Si-SBDは、PN接合ではなく、シリコンとショットキーバリアメタルと呼ばれる金属との接合(ショットキー接合)によるショットキー障壁を利用するダイオードであることは前回説明しました。Si-SBDの特性は、バリアメタルの種類によって異なります。そして、その特性の違いにより、アプリケーションの向き不向きがあります。以下の表はバリアメタルごとの特徴と適するアプリケーションをまとめたものです。表中に「×」の表記がありますが、他との比較において劣る、適さない、とご理解ください。

Si_1-3_struc

メタルAを用いたSBDは、非常にVFが低いことが特徴ですが、逆方向のリーク電流IRが他に比べ大きくなります。そのため、発熱が大きく、周囲が高温になる条件には向いていません。後ほど説明しますが、熱暴走を起こしやすい傾向にあります。アプリケーションとしては、VFが小さいことから導通損失が少なく電圧降下が小さいので、バッテリ駆動回路での使用に適しています。

メタルBは、VFとIRのバランス型です。DC-DCコンバータ回路によく使われます。

メタルCはIRが非常に小さく発熱も少ないので高温での使用に向きます。そういう点では車載機器への応用に優位です。

他のダイオードは、汎用のPN接合整流ダイオードのことです。IRは小さく、ほとんどの場合無視できる値です。それに対してSi-SBDは無視できないIRが存在します。これは、Si-SBDを使う上で重要なポイントです。

続いて、下のグラフは、表では○や△で表した各SBDの特性を具体的に示しています。例えば、メタルAはVFが非常に低いのですが、IRは大きいといったことが見て取れます。

Si_1-3_char

Si-SBDの熱暴走

ここで、Si-SBDを使用する際に重要な検討事項となる熱暴走について説明します。熱暴走は、発熱によりダイオードのTjが最大定格を超えて、最悪は破壊に至ることもある現象です。前述した通り、Si-SBDのIRによる損失は無視できません。発熱はIRとVR(逆方向電圧)の積、つまりリーク電流による逆電力損失に熱抵抗を掛けたものにものです。これは、普通の熱計算と同じです。したがって、IRが大きいメタルAのSBDは最も不利になります。また、IRはVRが高くなると増える傾向にあり、温度が上がると増加する正の温度特性をもちます(前回説明参照)。自己発熱(または周囲温度の上昇)よってTjが上昇しIRが増加、さらに発熱してIRが増加するといった暴走状態が起こります。当然ながら、これは放熱量より発熱量が大きいという条件での話です。

熱暴走を防ぐには、諸条件による発熱があっても、それを放熱できる十分な熱設計が必要になります。以下、熱暴走に関するポイントです。

  • IRに起因した発熱による熱暴走はダイオードを破壊に至らしめる
  • 発熱量<放熱量となる十分な熱計算、放熱設計が必要
  • TjがTj maxを超えてはならない:Tj = Ta+発熱
  • 発熱 = 熱抵抗(θja)×電流(IR)×電圧(VR)
  • 放熱はパッケージ、実装基板、周囲環境で異なるので検証が必要

VFとIRによるアプリケーションイメージ

最後にダイオードの特性と適するアプリケーションのイメージを示しますので、設計の参考にしていただければと思います。

Si_1-3_appli.png

【資料ダウンロード】Siパワーデバイスの基礎

Si半導体を用いたパワーデバイスには非常に多くの種類がありますが、このハンドブックでは、主に電源用途のダイオードとトランジスタを中心に基礎的なポイントを解説します。また、回路設計時のトランジスタ選択の手順と決定方法、各特性や特徴を利用したアプリケーション事例を紹介します。

ダイオードとは-ショットキーバリアダイオードの特徴

Siパワーデバイス

Siパワーデバイスの基礎