Siパワーデバイス|基礎編

整流ダイオードの比較-整流・スイッチング・SBD・FRDの特性・用途・選び方

2016.04.26

この記事のポイント

・パワー系Siダイオードの大まかな特徴の比較を知っておく。

この章で取り上げるダイオードは高耐圧で高電流を扱えるタイプのものですが、特性、特徴、製造プロセスからいくつかに分類できます。また、ダイオードは基本的にアプリケーションに対して、特性や性能が最適化されています。

整流ダイオードの特徴比較

ここでは、整流ダイオードを4つのタイプに分類してみました。汎用の整流用途、汎用のスイッチング用途、ショットキーバリアダイオード、ファストリカバリダイオードの4種類で、特徴を表にまとめました。

タイプ 特徴 VF IR trr 価格 適応するアプリケーション
整流 汎用 × × 一般整流
電源の逆接続保護
スイッチング スイッチング用 × 単純なスイッチング用途
マイコン周辺のスイッチング
ショットキーバリア
SBD
高速(~200V)
低VF
× × DC-DCコンバータ
AC-DCコンバータ(2次側)
ファストリカバリ
FRD
高速(~200V) × × AC-DCコンバータ
インバータ回路

汎用タイプは、一般的な整流、つまり交流を直流に整流することを主な目的としたものです。ダイオードブリッジは整流用にダイオードを組み合わせたものです。他には、電源や電池を逆接続してしまった場合に過電流を流さないための保護用にも使われます。順方向電圧VFは扱える電流によって違いますが、1V前後が標準的です。これはシリコンのPN接合でできているダイオードの一般的なVFです。逆回復時間trrは、50Hz/60Hzといった商用電源の整流が前提ですので、特に速くないものが標準です。

スイッチングタイプは、文字通り電源の切り替えなどの用途が主です。VFは汎用タイプと同等のものが標準です。スイッチング用途を目的にしていますので、trrは汎用タイプより高速になっています。ただし、ショットキーバリアダイオードやファストリカバリダイオードのようなスピードではなく、汎用タイプに比べてスイッチング特性が速いという立ち位置です。

ショットキーバリアダイオード(SBD)は、PN接合ではなく、金属と半導体、例えばN型シリコンとの接合により生じるショットキーバリア(障壁)を利用しています。PN接合のダイオードと比較してVFが低く、スイッチング特性が速いのが特徴です。ただし、逆方向のリーク電流IRが大きく、条件によっては熱暴走を起こすことに注意が必要です。VFは、例えば10Aといった大電流を流しても0.8V程度、数Aであれば0.5V前後なので、高効率が求められるDC-DCコンバータやAC-DCコンバータの二次側での使用が代表的な用途といえます。

ファストリカバリダイオード(FRD)はPN接合のダイオードですが、trrを大幅に改善した高速ダイオードです。また、SBDの耐圧(逆方向電流VR)は200V以下となりますが、FRDは800Vといった高耐圧が可能です。ただし、一般的にVFは汎用タイプより高く、高耐圧高電流仕様だと2V前後が標準的ですが、近年はVFを低減したタイプも増えています。高耐圧と高速性から、AC-DCコンバータやインバータ回路で使用されることが多いです。

以下の図は、上述したことを図化したものです。また、この4タイプに限った特性ではありませんが、Siダイオードの基本的な温度特性についても示しておきます。

Si_1-2_vi

繰り返しになりますが、一番左の図は、SBDが他の3タイプに比べてVFが低いことと、IRが大きいことを示しています。

真ん中の図は、SBDとFRDは他の2タイプに比べtrrが大幅に高速であることと、trr間に流れるIRが大きいと損失が大きいことを示しています。

右の図は、Siダイオードの基本的な温度特性で、高温になるとVFは低下し、IRは増加します。

次回は、SBDについて、もう少し詳しく説明します。

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Si半導体を用いたパワーデバイスには非常に多くの種類がありますが、このハンドブックでは、主に電源用途のダイオードとトランジスタを中心に基礎的なポイントを解説します。また、回路設計時のトランジスタ選択の手順と決定方法、各特性や特徴を利用したアプリケーション事例を紹介します。

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