ノイズ
効果的なデカップリングコンデンサの使い方 その他の注意点
2018.08.07
この記事のポイント
・Qと周波数-インピーダンス特性の関係を理解して、目的によってQの違いを使い分ける。
・高Qのコンデンサは狭帯域でインピーダンス低下が急峻。低Qのものは広帯域で穏やかな低下を示す。
・基板パターンのサーマルリリーフなどはインダクタ成分を増加させ、共振周波数を低周波側に移動させる。
・対策検討時の仮実装は、現実の修正に沿った実装の仕方をしないと、修正後の基板で検討時の効果が得られない可能性がある。
・静電容量変化率が大きいと共振周波数が変動し、所望の周波数でのノイズ減衰が得られなくなる。
・温度条件や変動が厳しいアプリケーションでは、CH、C0G規格のような温度特性のよいものの使用を検討する。
前回は、「デカップリングコンデンサ(バイパスコンデンサ/パスコン)の使い方」のポイント1「複数個のデカップリングコンデンサを使用する」に続いて、ポイント2の、「コンデンサのESLを減らす」について説明しました。今回は、最後のポイントになる「その他の注意点」について説明します。
・ポイント1:複数個のデカップリングコンデンサを使用する
・ポイント2:コンデンサのESL(等価直列インダクタンス)を減らす
・その他の注意点
効果的なデカップリングコンデンサの使い方:その他の注意点
①Qの高いセラミックコンデンサ
コンデンサにはQと呼ばれる特性があります。以下の図はQと周波数-インピーダンス特性の関係を示したものです。
Qが高いと特定の狭い帯域に対してインピーダンスが極端に低くなります。Qが低い場合にはインピーダンスは極端に下がりませんが、広い帯域にわたりインピーダンスを下げることができます。この特性は特定のEMC規格への準拠に有効な場合があります。例えば、静電容量のばらつきが大きいコンデンサを使用する場合、Qが高いと狙った周波数のノイズを除去できない個体が存在する可能性があります。こういった時、あえてQが低いコンデンサを使用して、ばらつきによる影響をおさえる手法もあります。
③対策検討時のコンデンサ仮実装
試作後に高周波のノイズ対策が必要になり、小容量のコンデンサの追加を検討することがあります。その際に、下図のように大容量のコンデンサの上に追加のコンデンサを実装すると(左の例)、縦方向に余計なインダクタンス成分が追加されることになるため、コンデンサ追加の効果が十分に発揮されません。中央の例では、「小容量のコンデンサをノイズ源に極力近づける」というセオリーには反していませんが、実際に修正するPCBレイアウトとはインピーダンスが異なってしまします。最良の方法は、実際にする修正に極力近い配置で検討を行うことです(右の例)。
対策検討時にはノイズ試験クリアしたが、修正したPCBに実装するとNGになるということも起こり得ますので、検討時から実際の実装を意識する必要があります。
④コンデンサの静電容量変化率
ノイズ対策用のコンデンサの静電容量変化率が大きいと、共振周波数の変動が大きくなり減衰したい帯域に変動やばらつきが生じ、意図したノイズ対策が困難になる場合があります。特に、狭帯域で大きな減衰を必要とするノイズの対策では注意が必要です。以下の表は静電容量の変化率に対する実際の静電容量と共振周波数を示しています。あらためて見ると、条件によりますが許容できない場合も少なくないことがわかります。
静電容量変化率 (%) | 容量(pF) | 共振周波数(MHz) |
---|---|---|
+20 | 1,200 | 145 |
+10 | 1,100 | 152 |
+5 | 1,050 | 155 |
±0 | 1,000 | 159 |
-5 | 950 | 163 |
-10 | 900 | 168 |
-20 | 800 | 178 |
※ L=1nHとして計算
⑤コンデンサの温度特性
コンデンサには、温度による特性変動があることは既知の事実です。現状ではEMC試験の温度特性は規格化されたものはありませんが、アプリケーションによっては明らかに高温下、低温下での動作を強いられたり大きな温度変化が生じたりする条件や環境で使用されるものがあります。
このような場合には、④静電容量変化率の項で示したような問題が生じる可能性が高いので、可能な限りノイズ対策に使用するコンデンサには、CH、C0G規格のような温度特性のよいものを使用する配慮が必要です。