ノイズ

効果的なデカップリングコンデンサの使い方 ポイント2

2018.06.26

この記事のポイント

・効果的なデカップリングコンデンサの使い方として、①複数を使用する、②コンデンサのESLを下げる、2つのポイントがある。

・コンデンサのESLを減らすことによって高周波特性を改善し、より効果的に高周波ノイズを低減することが可能。

・同静電容量でも、サイズや構造の違いでよりESLの小さいコンデンサが存在する。

前回は、「効果的なデカップリングコンデンサの使い方」のポイント1として、「複数個のデカップリングコンデンサを使用する」ことを説明しました。今回は、「ポイント2」について説明します。

ポイント2:コンデンサのESLを減らす

デカップリングコンデンサの効果的な使い方の2つ目のポイントとして、コンデンサのESL、等価直列インダクタンスを減らすアプローチがあります。ESLを減らすといっても、個体のESL自体を変えることはできませんので、「同じ静電容量でもESLの小さいコンデンサを使う」ことになります。ESLを減らすことによって高周波特性を改善し、より効果的に高周波ノイズを低減することができます。

同じ静電容量でもサイズの小さいコンデンサを使用する

積層セラミックコンデンサ(MLCC)には、同じ静電容量でもいくつかのサイズが違うパッケージが用意されていることがあります。ESLは端子部分の構造に依存します。サイズが小さいコンデンサは基本的に端子部も小さく、通常ESLは小さくなっています。

右のグラフは、静電容量が同じでサイズの異なるコンデンサの周波数特性の例です。グラフが示す通りより小さい1005サイズの方が共振周波数が高く、以降の誘導性領域の周波数でもインピーダンスが低いことがわかります。これは「コンデンサのインピーダンスの周波数特性とは?ESR、ESLとの関係」で説明したように、コンデンサの共振周波数は以下の式に基づき、式から静電容量が同じであればESLが低いほど共振周波数が高くなります。また、誘導性領域のインピーダンス特性はESLに依存することも説明した通りです。

コンデンサの共振周波数の算出式

静電容量が同じでサイズが違うコンデンサの周波数とインピーダンスの関係

ノイズ対策において、より高い周波数でのノイズを低減する必要がある場合には、サイズの小さいコンデンサを選択する方法があります。

ESLの低減を図ったコンデンサを使用する

積層セラミックコンデンサ中には形状や構造によってESLの低減を図ったタイプがあります。

ESLの低減を図ったコンデンサ

図に示されているように、一般的なコンデンサは短辺側が電極になっていますが、LW逆転タイプは逆に長辺側が電極になっています。L(長さ)とW(幅)が逆転していることに由来する呼称です。電極の幅を広げることでESLの低減を図ったタイプです。

3端子コンデンサは、一般のコンデンサ(2端子)の周波数特性を改善するために構造を工夫したコンデンサです。3端子コンデンサは2端子コンデンサの片方の端子(電極)の他端を外に出し貫通端子とし、もう一方の端子をGND端子としています。上図では、入出力電極が両端が出ている貫通端子に相当し、左右の電極は当然ながら導通しています。この入出力電極(貫通端子)とGND電極間に誘電体がありコンデンサとして機能します。

電源や信号ラインに入出力電極を直列に挿入し(入出力電極の一方を入力側に他方を出力側に接続)、GND電極はグランドに接続します。これにより、入出力電極のESLはグランド側に含まれないためグランドのインピーダンスは非常に低くなります。また、入出力電極のESLはノイズの経路に直接挿入されることによって、ノイズの低減(挿入損失を上げる)に寄与します。

GND電極は長辺側に対に配置することでESLを小さく抑え、さらに並列接続になることからESLは半分になります。

このような構造から3端子コンデンサは非常に低いESLに加えてESRの低く抑えてあり、同静電容量で同サイズの2端子タイプに比べ大幅な高周波特性の改善が可能です。

次回は、関連するいくつかの注意点について説明をする予定です。

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