ノイズ

デカップリングコンデンサ(バイパスコンデンサ/パスコン)の使い方 ポイント1

2018.05.29

この記事のポイント

・効果的なデカップリングコンデンサの使い方として、①複数を使用する、②コンデンサのESLを下げる、2つのポイントがある。

・複数を使用する場合は、静電容量が同じか異なるかで効果が変わる。

前々回前回とコンデンサの周波数特性とそれを利用したノイズ低減について説明してきました。今回からは3回にわたり、デカップリングコンデンサの効果的な使い方について説明します。

効果的なデカップリングコンデンサの使い方

効果的なデカップリングコンデンサの使い方のポイントは、大きく分けて以下の2つになります。また、その他にいくつか注意点があります。今回は、以下の3つの中から、「ポイント1」について説明します。

  • ・ポイント1:複数個のデカップリングコンデンサを使用する
  • ・ポイント2:コンデンサのESL(等価直列インダクタンス)を減らす
  • ・その他の注意点

ポイント1:複数個のデカップリングコンデンサを使用する

効果的なデカップリングコンデンサの使い方として、1個ではなく複数個のコンデンサでデカップリングを行う方法があります。複数個のコンデンサを使う場合、同じ静電容量のコンデンサを使うのと、静電容量の違うコンデンサを織り交ぜて使うのとでは効果が違ってきます。

・同じ静電容量のコンデンサを複数個使う場合

右のグラフは、22μFのコンデンサが1個の場合(青)、1個追加して2個の場合(赤)、さらにもう1個追加して3個(紫)の場合の周波数特性です。

グラフが示す通り、静電容量が同じコンデンサを追加すると、全周波数範囲でインピーダンスが低い方へシフト、つまり低下します。

これは、静電容量が同じコンデンサを並列に接続したときの、共振点までの容量性の特性、ESR(等価直列抵抗)に依存した共振点のインピーダンス、共振点以降のESL(等価直列インダクタンス)による誘導性特性を考えると理解できます。

並列接続した静電容量は加算になるので、3個の場合は66μFになり、容量性領域のインピーダンスは低下します。

静電容量が同じの複数個のデカップリングコンデンサを使用した場合の周波数とインピーダンスの関係

共振点のインピーダンスは、コンデンサ3個分のESRの並列接続ですので、となり、これらのコンデンサのESRがすべて同じだとすると、ESRは1/3に減少しインピーダンスも低下します。

共振点以降の誘導性領域のESLも並列ですので、となり、3つのコンデンサのESLがすべて同じだとすると、ESLは1/3に減少しインピーダンスも低下します。

この様に、同じ静電容量のコンデンサを複数個使うことで、全周波数範囲でインピーダンスを下げることができるので、ノイズをより減衰させることが可能です。

・静電容量の異なるコンデンサを複数個使う場合

こちらは、22μFのコンデンサに、0.1μF、そして0.01μFのコンデンサを並列に追加した場合の周波数特性です。

静電容量がより小さいコンデンサを追加することで、高い周波数でのインピーダンスを下げることができます。22μF単体での周波数特性に対して、0.1μFと0.01μFの特性が合成された特性(赤破線)になります。

ここで気をつけなければならないのは、周波数によって反共振が発生し、逆にインピーダンスが高くなりEMIが悪化することです。反共振は容量性特性と誘導性特性が交わるポイントで発生します。

静電容量が異なる複数個のデカップリングコンデンサを使用した場合の周波数とインピーダンスの関係

追加するコンデンサの容量は、低減したいノイズの周波数に合わせて選定するのが一般的です。

なお、ここで示した周波数特性の波形図は理想的なものであり、基板のパターン配線などに起因する寄生成分は考慮されていません。実際のノイズ対策では、寄生成分の影響を加味する必要があります。次回は、2つ目のポイントについて説明をします。

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