ノイズ

ノイズ対策の手順

2017.12.26

この記事のポイント

・製品開発が進めば進むほど使用できるノイズ対策技術や手段が制限され、対策コストはどんどん上昇する。

・製品開発の初期段階で十分に検討、評価しておくことで、余裕を持ったノイズ対策が可能になる。

・ノイズの種類や性質を理解して、それぞれのノイズに効果のある対策を取ることが非常に重要。

・ノイズ対策は、周波数成分の把握→発生源と伝導経路の把握→GNDの強化→ノイズ対策部品の追加の手順で行う。

ここから、新章「ノイズ対策」に入ります。ここでの「ノイズ対策」は、「スイッチング電源」のノイズに関する対策になります。しかしながら、基本部分や考え方はノイズ全般に通じるものです。新章第1回は「ノイズ対策の手順」について説明します。

ノイズ対策と製品開発フェーズ

ノイズ対策の手順を説明する前に、製品の設計/開発から量産に至る過程の、どの段階でノイズ対策を取るべきかという話をしたいと思います。

右の図は、設計/開発、評価、量産という時間軸に対して、ノイズ対策の自由度、つまり取れる対策の選択肢の多さと、対策にかかるコストをイメージしたものです。縦軸は上に行くに従って「高い」と見てください。

図は、開発が進めば進むほど使用できるノイズ対策技術や手段が制限され、対策コストはどんどん上昇することを示しています。量産を開始してからノイズの問題が発覚し、対策を取ろうにもでき上がっているゆえに打てる手がなくて、けっきょく基板変更..などといったことは、誰もが考えたくないことです。

大原則として、製品開発の初期段階で十分に検討、そして評価しておくことで、もしノイズの問題が見つかっても余裕を持ったノイズ対策が可能になります。また、ノイズの種類や性質を理解して、それぞれのノイズに効果のある対策を取ることが非常に重要です。闇雲に対策を施すと、効果が認められない、それどころか逆にノイズが悪化したといった例は少なくありません。

ノイズ対策の手順

前述したように、闇雲な対策は損失を大きくするだけです。対策を決定するまでには、いくつかの手順を踏む必要があります。以下に例を示します。

●ステップ1:スイッチング波形の周波数成分の把握

スイッチング周波数、立ち上がり/立ち下がり、オーバーシュート/アンダーシュート、リンギングなど、基本波と発生しているそれぞれの現象の周波数成分を確認する必要があります。これは、対処したいノイズの周波数によって、対策方法や対応部品が異なり、適切な選定をしないと効果が見込めないからです。

●ステップ2:ノイズ発生源と伝導経路の把握

発生しているスイッチングノイズが、どの経路で一次側、もしくは二次側に伝導しているかを確認します。ノイズ対策は、ノイズの伝導経路で行う必要があります。そして、すべての伝導経路に対策を施さなければなりません。1ヵ所でも伝導経路を見落とすと、対策は完了しません。

●ステップ3:GNDの強化

ノイズ対策の最終ステップはノイズ対策部品を追加することになりますが、その前にPCB(プリント基板)のGND強化を検討すべきです。しっかりしたGND設計は、ノイズ対策はもちろん、性能や安定性向上にも関わる重要なポイントです。GND強化により、ループのインピーダンスを低減可能です。また、フィルタの効果を向上させるためにもGNDの強化は有効です。

●ステップ4:フィルタなどノイズ対策部品の追加

最終的に、フィルタによる減衰、バイパスコンデンサによるバイパス、チップビーズなどの抵抗成分によるノイズ吸収など、ノイズの種類や性質に対応するノイズ対策部品を検討し、回路に追加します。フィルタ、バイパスコンデンサの効果などは、ステップ3で述べたようにGNDの良し悪しにより効果が変わるため、必ずGND強化を先に実施してください。

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