伝達関数

ベースとなる降圧モード伝達関数の導出

2016.06.21

この記事のポイント

・スイッチングブロックG3、出力フィルタブロックG4の伝達関数をもとめ全体の伝達関数を導出する。

・G=G1×G2×G3×G4の記述に則り、まずは降圧モードの伝達関数を導出してみる。

ベースとなる降圧モード伝達関数の導出

スイッチングの伝達関数を求めるにあたり、最初にベースとなる降圧モードの伝達関数を導出します。まず、G3の伝達関数を導出し、次にG4、そして降圧電圧モード一般式となるTOTAL伝達関数を導出します(次セクションのブロック図参照)。

G3の伝達関数導出、周波数特性

最初に、スイッチングレギュレータを機能ごとにブロック分けしたことを思い出す必要があります。ここでは、最初にスイッチングブロックのG3に関する伝達関数を導出して行きます。

まず、を求めていきます。図2を見てください。

これは、降圧モードのスイッチング波形です。VSWは、SW端子がH(VIN)と、L(O)の時間平均として記述できるので、

式4-1で、D→D+?D、VSW→VSW+?VSWとすると、

と導出できます。

この結果は、右の図が示すように、G3はGainが一定で位相は変化しないことを示しています。

G4の伝達関数の導出

続いて、出力のフィルタブロックであるG4を求めて行きます。図4を見てください。

これは、VSWからLCフィルタを通ってVoutにつながる経路を示したものです。VSWから見て、VoutはLとZtotalのインピーダンス分割と考えることができるので、以下の式4-2を導出することができます。

ここで、このG4の伝達関数をもとに、2つのケースについて考えてみたいと思います。

ケース1

もし、RESR=0、R=open(∞) のときは、G4は以下になります。

これは、よく見るLCフィルタで、ボード線図は右図のようになります。おそらく、すぐにイメージできるかと思います。

fが小さいときG4は、正(>0)の値になるので、Phaseは常に0です。

fが大きくなり、までになると、分母が0になるためGainは発散します。

さらにfが大きくなると、G4は負(<0)の値になるため、Phaseは180°回ることになります。

ケース2

ケース1にRESRとRが付加されたときは、分母に1次の虚数項が加わります。fが十分小さい、または、fが十分大きいときはケース1と同じですが、fの共振点辺りでは分母が0になれないため、Gainは発散しません。

また、ここでは1次の虚数項が残るために、位相が0→180°になるのではなく、0→90°→180°と変化して行きます。これをボード線図で示したものが図6です。

G4の伝達関数とボード線図の関連がイメージできたでしょうか。

TOTAL伝達関数(降圧電圧モード一般式)

ここからは、これまで導出した伝達関数をもって、全体としてのTOTAL伝達関数を求めて行きます。TOTALの伝達関数は、以前、以下の式で表すことができると説明しました。

これをもとに、Gは以下のように書き表すことができます。

この式のボード線図は図7のようになり、各ブロックの特徴を見ることができます。式の色分けとグラフの領域枠の色は該当を示しています。

このように、ブロックごとに伝達関数を記述し立式すれば、系のボード線図を書くことは可能です。しかし、これまでの論述は、まずはイメージができるように簡便に話を進めたため、厳密ではない部分があります。それは、G3とG4の導出部分で、この考え方は降圧モードには適用できますが、昇圧および昇降圧モードには適用できません。そこで、これらすべてのモードに適応可能な、状態平均化の考えを取り入れて行く必要があります。