伝達関数
昇降圧コンバータの導出例 その2
2017.09.12
この記事のポイント
・各コンバータにおいて導出するのは、Δvout/ΔD、ΔiL/ΔDである。
・伝達関数は、系の安定状態を考え、外乱に対する変化量を求める2つのステップで導出する。
・昇降圧コンバータの伝達関数も基本的に昇圧コンバータ、降圧コンバータ同様に手順で導出する。
今回は前回の「昇降圧コンバータの伝達関数導出例 その1」に続く「その2」です。昇降圧コンバータにはいくつかの制御方式があります。ここでは、その中から2種類を取り上げ、今回は2つ目になります。
今回も同様に、導出する伝達関数は、とで、同様に2つのステップで伝達関数を導出していきます。
昇降圧コンバータの伝達関数導出例 その2:ton≠ton’ となる昇降圧コンバータ
今回の制御方式は、降圧スイッチと昇圧スイッチのオン時間が同時ではなく、それぞれが独立して動作し制御する方式です。そのため、入力電圧と出力電圧の関係によって、降圧スイッチと昇圧スイッチの挙動が変化するため、数パターンの伝達関数が存在します。今回は、降圧スイッチと昇圧スイッチが共にスイッチングしている領域の伝達関数を導出します。
最初に、具体的な制御システムを図13に示します。
入力と出力の関係によって、降圧、昇降圧、昇圧の3つのモードで動作し、SW1とSW2のスイッチング波形を示してあります。それぞれのモードにおけるスイッチの動作がわかると思います。
ton≠ton’となる昇降圧コンバータ
右の回路は、上記の回路を簡略化したものです。立式は、今までやってきたように2つのステップにより行います。
●ステップ1:系の安定状態を考える
① コイル電流は一周期で変化しない
② コンデンサの電荷量は一周期で変化しない
●ステップ2:
外乱に対する変化量を求め、伝達関数を記述する
先の式5-21、5-22からの計算例を示します。
式5-21、5-22に対して、とおいて代入すると、以下のようになります。
ここで、とします。
そして、式5-25、5-26を連立してとを求めると、以下のようになります。
結果としては、Dutyを示す部分は異なりますが、特性としては同様の結果が得られます。
さて、ここまで降圧、昇圧、昇降圧コンバータの伝達関数を導出してきましたが、すべてに統一的な考え方を使ってきました。ぜひ、実際に自分で立式から計算をしてみてください。次回からは、他の要因を含めた、これら伝達関数の考察を行います。
技術資料ダウンロードのご案内
ローム主催セミナーの講義資料やDC-DCコンバータのセレクションガイドなど、ダウンロード資料をご用意いたしました。