伝達関数

サブハーモニック発振の理論解

2016.03.23

この記事のポイント

・デューティサイクルが50%以上になるとサブハーモニック発振が起きる。

・伝達関数と直接関係はないが、サブハーモニック発振の理論解を理解することは重要。

固定周波数のピーク電流制御の降圧コンバータにおいて、インダクタ電流が連続的に流れ、デューティサイクルが50%以上になる場合に、サブハーモニック(低調波)発振が発生することは広く知られており、昨今のほとんどの電源用ICでは、対策としてスロープ補償回路を搭載しています。

今回は、DC-DCコンバータの伝達関数の導出からは少し外れますが、サブハーモニック発振の理論解を理解することは重要なので、ここで説明します。

tf_11_fig10

図10

電流モード降圧コンバータのコイル(インダクタ)電流波形は図 10 のようになります。ここで、ある時間における電流の値をInとし、1周期後の電流値をIn+1とします。

また、オンの時間をtON(n)、オフの時間をtOFF(n)、オン 時のコイル電流の傾きをm1、オフ時のコイル電流の傾きをm2とします。

これらを用いて、In+1をInで表すと式3-15になります。

tf_11_fom3-15

ここで、m1は式3-16、また、m2は式3-17で表すことができます。

tf_11_fom3-167

下の図11は、図10に対するPWM入力の波形です。カレントセンスゲインをRSとすると、オン直後のPWM入力はRSInとなります。

tf_11_fig11

図11

さらに、tONの間に増加した電流はm1tON(n)になるので、PWM入力のピーク電圧VCは式3-18で表されます。

tf_11_fom3-18

また、式3-15のtOFF(n)は、式3-19のように書き換えることができます。 ここで、Tは周期です。

tf_11_fom3-19

式 3-18 より tON(n)を求め、それを式3-15に代入し計算すると、式3-20が求まります。

tf_11_fom3-20

{In+1 – In}は等比数列なので、サブハーモニック発振を起こさない条件は、この等比数列がn → ∞で、0に収束することとなります。つまり、以下の式3-21が条件です。

tf_11_fom3-21

さらに、式3-21に、式3-16と3-17を代入すると、以下の条件式3-22が求まります。

tf_11_fom3-22

これで、デューティサイクルDが1/2、50%以下であるのがサブハーモニック発振しない条件、冒頭の表現に当てはめると、50%以上になるとサブハーモニック発振するという理論解を導き出すことができました。