伝達関数

DC-DCコンバータ : 各制御系に対する伝達関数の共通化 ーはじめにー

2015.10.14

この記事のポイント

・開発者、設計者問わず伝達関数を理解することは非常に有意義。

・ここでは伝達関数導出にあたり共通化を課題とする。

・伝達関数の導出過程は数学的アプローチを基本とし、各制御方法に対して統一的なアプローチをとる。

伝達関数とは、システムの入力と出力の関係性を表し、入力を出力に変換する関数です。制御工学では、伝達関数をシステムの挙動や安定性を評価する手段として用います。もちろん、このサイトのメインテーマである電源は伝達関数を持ち、電源設計において伝達関数を求めることで、応答特性や安定性を評価することが可能になります。この「伝達関数編」では、DC-DCコンバータの伝達関数の考え方、導出のアプローチなどについて話を展開していきます。多少複雑な数式がでてくると思いますが、伝達関数を理解することは非常に有意義です。

ところで、ここではDC-DCコンバータの伝達関数を求めることがテーマですが、首題にある通り「各制御系に対する伝達関数の共通化」を課題にします。

DC-DC コンバータの伝達関数の導出には、スイッチング動作を周期で時間平均化し、リニア動作として近似する必要があります。更に、導出した伝達関数は降圧、昇圧、昇降圧といった電圧変換の種類や、電圧モードや電流モード、そしてオン時間固定ヒステリシス制御(リップル制御、コンパレータ制御などとも呼ばれる)といった制御方法で異なります。そのためか、各モードによってアプローチがバラバラで、結果はともかく煩雑な状況にあります。

そこで、これらの多種多様な伝達関数を統一的なアプローチでまとめることはできないだろうかと考え、DC-DCコンバータの伝達関数を導出するにあたり「共通化」を課題にしました。

少し具体的な話をします。下の図は左から、降圧コンバータの「電圧モード制御」、「電流モード制御」、「オン時間固定ヒステリシス制御」の FRA(Frequency Response Analyzer:周波数特性分析器)による測定波形です。このように異なる制御の特性を並べて比べてみると、まったく違う部分とよく似ている部分があることがわかると思います。これらの伝達関数を導き出す方法を共通の思想、アプローチで行い、共通のプラットフォームで異なる特性を関数化できないかを考えます。

ここでは、以下の2点を念頭に話を進めていきます。

1. 伝達関数の導出過程は数学的アプローチを基本とする
伝達関数を導出する過程において、状態平均化法、行列といった数学的な手法を用い、伝達関数に正面から向き合います。ただし、最終的にはそれらを使わずにイメージで伝達関数を導出できるようにしていきます。

2. 各制御方法に対して統一的なアプローチをとる
降圧や昇圧、電圧モードや電流モードといった違いに対して別々のアプローチをとらないことを前提とします。同じアプローチを行う中で、各モードの特徴を組み込むことによって伝達関数を導出して行きます。

最終的には、DC-DCコンバータの制御モードが違っても根幹は同じだという理解を目指します。共通部分とモードごとの特徴をとらえ、関数本来の一般性と統一性が高い伝達関数の導出が目標です。