DC-DCコンバータ|評価編

同期整流降圧コンバータのデッドタイム損失

2017.10.17

この記事のポイント

・デッドタイム損失とは、デッドタイム中にローサイドスイッチ(MOSFET)のボディーダイオードの順方向電圧と負荷電流で発生する損失。

・デッドタイムは、同期スイッチの貫通電流を防止するために意図的に設けられている。

前回は、同期整流降圧コンバータのスイッチノードに発生するスイッチング損失に関する説明をしました。今回は、同じくスイッチノードに発生するデッドタイム損失を考察します。

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デッドタイム損失

デッドタイム損失とは、デッドタイム中にローサイドスイッチ(MOSFET)のボディーダイオードの順方向電圧と負荷電流で発生する損失です。ここでは、Pdead_timeの記号を使います。

同期整流方式は、ハイサイドスイッチとローサイドスイッチが交互にオンオフします。両サイドのスイッチングが同時にオン、または同時にオフすることなくスイッチできるの理想的です。しかしながら、実動作においてそれは困難であり、安全な動作のためにあえて両サイドのスイッチが同時にオフする期間を設けています。この期間をデッドタイムと呼んでいます。「安全な動作のために」というのは、両サイドのスイッチが同時にオンしてしまうと、貫通電流、スルー電流、シュートスルーなどと呼ばれている電流が、通常はVINからハイサイドスイッチとローサイドスイッチを通じてGNDに流れます。容易にイメージできると思いますが、これはVINとGNDが短絡したのとほぼ同じ状態で、大電流が流れスイッチであるMOSFETが破壊することがあります。これを避けるため、同期整流式のDC-DCコンバータICには、両サイドのスイッチが同時にオンしない、つまり一度両方がオフしてから該当のスイッチがオンする制御回路が搭載されています。

話をデッドタイムに戻します。デッドタイムでは、両サイドのスイッチングがオフしているので、単純には出力にはどちらのスイッチからも電流は流れないはずです。ところが、実際のスイッチはMOSFETであり、MOSFETにはボディーダイオードと呼ばれる寄生ダイオードが存在します。下の図で、MOSFETのドレイン-ソース間に接続されているように書かれているダイオードは、ボディーダイオードを表しています。

両サイドのスイッチがオフ状態のとき、ローサイドMOSFETのボディーダイオードは負荷電流に対して順方向になり、このボディーダイオードを介して負荷に電流が流れてしまいます。この損失=Pdead_timeは以下の式で算出できます。

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式からわかる通り、どの項も小さければ小さいほど損失は減ります。ICのデッドタイム制御は、安全が確保され、損失が最小になるような時間に設定されています。

次回はICの制御回路の損失を予定しています。

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