DC-DCコンバータ|評価編

出力フィードバック制御方式

2014.08.29

この記事のポイント

・スイッチングレギュレータの安定化はフィードバック制御によって行われる。

・フィードバック制御には大きく分けて3種類あるが、高速過渡応答にはヒステリシス制御が増えている。

スイッチングレギュレータの出力電圧は、基本的に安定化がなされています。つまり、設定した電圧値を一定に維持する機能を備えています。この安定化のために、スイッチングレギュレータは出力を制御回路にフィードバック(帰還)します。

大きく分けると、電圧モード制御、電流モード制御、ヒステリシス制御の3方式があります。

・電圧モード制御(PWMの例)

3D_voltage

電圧モード制御は最も基本的な方式です。フィードバックループを介して、出力電圧のみを帰還します。そしてエラーアンプで基準電圧と比較した差分の電圧を三角波と比較することで、 PWM 信号のパルス幅を決めて出力電圧を制御します。

この方式のメリットは、電圧だけのフィードバックループなので、制御が比較的単純なこと、オン時間を短くできること、ノイズ、EMI 耐性が高いことなどがあげられます。デメリットとしては、位相補償回路が複雑になることです。位相補償回路は外付けになるので、設計に手間がかかる可能性があります。

電圧モード制御

  • 電圧だけの帰還ループなので制御が単純
  • オン時間を短くできる
  • ノイズ 耐性が高い
  • 位相補償回路が複雑

・電流モード制御

3D_current

電流モード制御は、電圧モード制御を改良したものです。電圧モードの制御ループで使う三角波の代わりに、回路のインダクタ電流を検出して使います。インダクタ電流の代わりに、出力トランジスタを流れる電流や、電流センス抵抗を挿入して電流検出を行うこともできます。

フィードバックループは、電圧ループと電流ループの両方があり、制御は比較的複雑になりますが、位相補償回路の設計が大幅に簡単になるメリットがあります。

ほかのメリットとして、フィードバックループの安定性が高いこと、負荷過渡応答が電圧モードより高速なことなどがあります。デメリットとしては、電流検出が敏感なので、ノイズが多いとPWM制御に影響が出ます。

電流モード制御

  • 電圧モード制御を改良したもの
  • 三角波の代わりに、回路のインダクタ電流を検出して使う
  • フィードバックループの安定性が高い
  • 位相補償回路の設計が大幅に簡単になる
  • 負荷過渡応答が電圧モードより高速
  • 電流検出フィードバックループのノイズに注意

・ヒステリシス制御(リップル制御)

ヒステリシ制御方式は、さらに高速な負荷過渡応答が必要な負荷、例えばCPUやFPGAなどの電源要求に対して開発された方式です。出力のリップルを検出して制御しているため、リップル制御方式とも呼ばれます。

3D_hys

この方式は、出力電圧をエラーアンプを介さずコンパレータによってモニタします。設定したしきい値を上回った、または下回ったことを検出して、コンパレータが直接的にスイッチのオン/オフ制御を行います。オン時間固定でしきい値を下回ったことを検出する方式、オフ時間固定でしきい値を上回ったことを検出する方式、上下両方のしきい値のウインドウを利用する方式があります。

メリットは、コンパレータによる直接的な制御により、過渡応答が極めて高速なことと位相補償が不要である点です。デメリットとしては、スイッチング周波数が変動すること、ジッタが大きいこと、出力リップル検出のためにESR(等価直列抵抗)が比較的大きい出力コンデンサが必要になる点ですが、改良が進んでおり、この方式を採用するICが増えています。

ヒステリシス(リップル)制御

  • コンパレータで出力を直接モニタ
  • 非常に負荷過渡応答速度が速い
  • 帰還ループの安定性が高い
  • 位相補償が不要
  • スイッチング周波数が変動する
  • ジッタが大き目
  • リップル検出のためESRの大きなコンデンサが必要

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スイッチングレギュレータの特性と評価方法