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スイッチングレギュレータの特性と評価方法

スイッチングレギュレータの評価:効率の測定

「スイッチングレギュレータの評価」と題して、「出力電圧」、「ロードレギュレーション」、「負荷応答の検討、測定方法」、「インダクタ電流の測定」の4項目について説明してきました。ここでは、5つ目の「効率の測定」について説明します。

スイッチングレギュレータの効率とは

効率の測定の前に、スイッチングレギュレータ効率の定義や考え方をおさらいしておきます。

スイッチングレギュレータの効率は%(パーセント)で表すことが一般的です。別に小数で表しても構いませんが、ここでは%で話をして行きます。効率は以下の式に基づきます。

見ての通り特別なものではなく、単純に「入れた電力」」に対して「取ることのできた電力」の比になります。例えば「効率90%」は、入れた電力の90%が出力として利用できることを意味し、10%は損失となり主に熱となって失われてしまいます。スイッチングレギュレータ、つまりDC/DCコンバータやAC/DCコンバータは電力変換を行っているのでわかりやすいと思います。もちろん、電圧変を行うLDOレギュレータなどのリニアレギュレータの効率も、同じ計算式で電力で算出します。

あらためて記す必要はないと思いますが念のために、入力電力は入力電圧×入力電流、出力電力は出力電圧×出力電流です。したがって、何を測定すれば効率が判明するかは明白です。

測定および検討

測定自体は比較的簡単です。原則的に、平均電力を測定して平均電力で計算を行います。スイッチングレギュレータの出力には基本的にリップルがあり、出力電圧と出力電流はリップルによって変動しています。入力においてもリップルが存在するケースもありますが、いずれにしてもリップルに伴うピーク値ではなく平均値を測定します。平均電力を測るのは特に難しくはありません。オシロスコープではなく電圧計や電流計を使えば、その測定値は自ずと平均値になっています。

他には出力負荷が必要になります。定常の平均電流を測るので、電子負荷や抵抗を利用できます。

測定は、電圧計と電流計で測るだけなのですが、出力負荷は給電する回路の最低値、標準値、最大値など数点以上を測定し、場合によってはグラフにプロットすることも必要です。入力電圧も想定される範囲の変動を与えます。また、周囲温度も変化させて測定します。

測定の際には、入出力をオシロスコープでモニタしながら行うと、負荷や接続した計測器の影響で異常が発生していないかがわかります。発振などを起こしている場合は、電圧計や電流計で測った平均値は評価できるデータとは言えません。また、特に最大負荷ではICや他の部品に異常な発熱がないか気を配る必要があります。高温下での測定は、常温で十分な効率が得られていることを確認してから、ある程度精度を持った温度管理下で測定を行います。Tjの最大定格を超えてしまうと、回路や動作に問題がなくても異常が発生し、最悪は破損に至ることがありますので十分な注意が必要です。

測定した効率の検討は、まずデータシートに掲載されている効率のグラフを参照するのがよいでしょう。回路や部品はデータシートの標準例に基づいている場合が多いので、効率曲線も基本的には近いものになります。比較という意味では、データシートのグラフの条件と同じ条件で測定してみる方法もあります。また、メーカーが提供している評価ボードとの比較もよい方法です。この場合、外付け部品などが異なれば、付け替えて測定することも必要です。

以下にポイントをまとめます。

  • 効率は平均電力で計算する(リップルのピーク値は使わない)。
  • 電圧計/電流計を利用することで平均値が得られる。
  • 想定される入力範囲、負荷(出力)電流、周囲温度といった変動要因を組み入れて測定する。
  • オシロスコープでモニタしながら測定することも有用。
  • 最大負荷での測定中は、異常な動作や発熱に注意する。
  • 評価にはデータシートの効率のグラフを参照する。

予想より効率が低い場合

検討の結果、「異常動作はしていないが、思いのほか効率が低い」といったような結論に至った場合には、何が効率を下げているかを見出して調整をすることになります。そのためには、損失が発生する場所や部品を経験則も含めて知っておくと、有効かつ迅速な対応が可能になります。

損失は、回路内の電力を消費するすべての部分で生じますが、主要な損失要因は、I2R損失、スイッチング損失および自己消費電流損失、遷移損失とその他の損失になります。

I2R損失は、内蔵パワートランジスタのオン抵抗と外付けのインダクタの直列抵抗に依存して発生します。したがって、パワートランジスタのオン抵抗とインダクタの直列抵抗が十分に低いかどうかを確認します。

スイッチング損失および自己消費電流損失は、IC内部のパワートランジスタのゲートドライブ電流と制御回路が必要とする電流です。パワートランジスタ内蔵型ICの場合は、パワーMOSFETをゲート電荷から選ぶことはできないので、基本的にICとしての消費電流が小さいものを選ぶ、もしくは消費電流を増やさない部品定数を選択することになります。

遷移損失は、上側パワーMOSFETが遷移中に短時間飽和するために生じます。また、デッドタイム中の導通損失も知られた損失です。これらは、IC内部で固定されているので、ほとんどの場合調整できません。調整可能なその他の損失としてインダクタのコア損失、基板配線抵抗などがありますが、損失全体からみるとわずかな率です。

この様に詰めていくポイントはありますが、電源ICに依存している割合が高くなっています。特にパワートランジスタ内蔵型の場合は、外付け部品の確認以外できることはほとんどありません。もちろん、電源ICは高度な制御を行い最適化されているので、基本的にベストな特性が得られるようになっています。

逆の言い方をすれば、ターゲットの効率が得られるICを選択することが非常に重要であるということになります。

とは言え、できることがまったくないわけではないので、BD9A300MUV に関しての例を示します。

<BD9A300MUVによる回路の効率が期待より低い原因例>

 

軽負荷時(10mA以下)

  • PGD(パワーグッド)やEN(イネーブル)を入力電圧にプルアップしている。
  • フィードバック抵抗に小さな定数(100Ω以下)を使用し無効電流が生じている。

重負荷時(1A以上)

  • DCRの大きなインダクタを使用している。
  • ESRの大きなコンデンサを使用している。
  • 周囲温度の上昇、ICやインダクタ自身の発熱により、DCRの増加、出力トランジスタのオン抵抗の増加、インダクタのインダクタンスの減少、特性の悪化が生じている。

以上で、効率の測定に関する説明は終わりです。また、これで「スイッチングレギュレータの評価」は最後になります。

キーポイント

・スイッチングレギュレータの効率は入力電力に対する出力電力の比率(%)。

・平均電力で計算する。

・パワートランジスタ内蔵型ICでは、損失のほとんどがICによるもので、外付け部品などの損失は無視できるレベル。


スイッチングレギュレータの特性と評価方法