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スイッチングレギュレータの特性と評価方法

スイッチングレギュレータの基本:重要特性-電源特性

スイッチングレギュレータの基本として、スイッチングレギュレータの重要特性について話を進めていますが、ここでは、前項の「ICの規格」に続いて「電源」としての重要特性を説明します。

近年のスイッチングレギュレータの設計は、使う電源用ICに大きく依存することは前述のとおりです。したがって、電源として必要な仕様を満たすためにICを選択するのが大前提です。そこで検討すべきは、ICと電源仕様の間で若干のトレードオフが必要になるかもしれない点です。

例えば、電源として過電流保護機能が必須だとして、ICを選定した場合に過電流保護の他に過電圧保護や過熱保護も備えているということはあり得ます。ICによっては、機能を無効にする選択ができるものもありますが、選択ができないものも多いです。こういった場合、あっても不都合がなければ、その機能を追加した電源仕様に変更することがよい選択かもしれません。逆に過電流保護のないICを選んで、回路を外付けして過電流保護機能を搭載する方法もありますが、回路設計、追加分品、動作の検証などを考えると、時間、コスト、実装スペースに対してデメリットのほうが多くなる可能性大です。機能的な問題やコスト増などがなければ、電源としてメリットが高まるトレードオフは許容できると思います。

電源の重要特性として、最低限理解し検討すべき特性を以下に示します。

ラインレギュレーション
ラインレギュレーションは、入力DC電圧の変動に対する出力電圧の変動です。%や決められた入力範囲における具体的な変動値、例えば12mVのように表す場合もあります。ラインレギュレーションは、電源IC、特にリニアレギュレータではほとんどの場合同名の規格値が存在します。意味的には全く同じです。入力範囲条件は、電源の入力として想定される電圧にベースに設定するのですが、ラインレギュレーションはあくまでも連続的な入力電圧の変動、つまり過渡的ではない変動についての特性になります。

近年のICのラインレギュレーションは非常に優れていますが、回路的にはICの性能に頼るばかりではなく、十分に入力電圧が安定するように入力コンデンサの検討が必要になります。

ロードレギュレーションーション
ロードレギュレーションは、負荷電流の変動に対する出力電圧の変動です。ラインレギュレーション同様に%や決められた負荷変動間の変動値で表します。ラインレギュレーションと同様にIC自体にこの仕様がありますが、電源としてみた場合には、出力配線の抵抗成分により、電源出口と負荷入口では電圧降下により電圧が違う点に着目する必要があります。電源出力の出口では負荷電流が変動すると電源回路自体のロードレギュレーションに依存した変動が起こりますが、負荷の入り口では配線の抵抗成分による電圧降下が追加され、大電流を要する負荷の電源ピンの電圧が思いのほか低下している、といったケースが多々あるので注意が必要です。これについては、「スイッチングレギュレータの評価」の項で詳しく説明します。

負荷の変動の1つとして、過渡的な変動がありますが、ラインレギュレーションと同様にロードレギュレーションは過渡現象に対する特性ではありません。負荷過渡に対しては、負荷過渡応答という特性で別途考えます。

効率
効率は、入力電力に対する出力電力の比率(%)で定義されます。単純には入力が引き込んでいる電力(電流×電圧)と、出力から取れている電力を測定することで得られる値です。効率の重要性は言うまでもありませんが、損失を抑えることは、発熱を下げることにつながります。発熱は取れる出力電力に制限を与えるばかりか、放熱や冷却のためのスペースやデバイスを必要とし、果ては電源回路や付加回路の信頼性を低下させる要因になりますので、重量な検討事項です。

入力/出力リップル電圧
リップル電圧は脈流のことで、入力と出力の両方に発生します。出力には、スイッチングレギュレータである以上、必ずスイッチングに起因したリップル電圧が存在します。スイッチングノイズという表現を使うこともありますが、スイッチングノイズには高調波やスパイクなどを含むことが多いようです。

リップル特性としては、脈の高さであるリップル電圧値と周波数が検討事項になります。FPGAのような1V以下の低電源電圧を使うデバイスの場合、リップル電圧により要求される電源電圧精度を満たすことができなくなってしまうケースがあります。また、高調波やスパイクも含めてシステムのS/Nを低下させる原因にもなります。

出力リップルは、出力フィルタによって低減することが可能ですが、PFMのように周波数が変動する場合にはさらなる検討が必要になることがあります。

入力リップルは、スイッチングトランジスタが大電流をスイッチングして入力に引き込むことで発生します。この電流のスイッチング(入り/切り)と入力の寄生インダクタンスによりスパイクが発生することがありますので、回路レイアウト設計上での注意が必要です。端的には入力コンデンサは極力ICの入力ピンのすぐそばに接続して寄生インダクタンスを排除するなどの手立てを要します。

負荷過渡応答
負荷過渡応答特性は、急激に出力負荷電流が変動した場合に、出力電圧が設定値に戻るまでの応答速度を示します。出力容量(コンデンサ)やESR(等価直列抵抗)の考慮の他、IC自体の応答性能も重要なファクタになります。電流モードの電源ICでは位相特性の調整により最適化が可能です。また、ヒステリシス(リップル)制御は非常に負荷過渡応答特性がよい方式です。

許容損失
電源回路に使っている素子(ICやトランジスタなど)の許容できる損失が直接的なものになります。Tjmax(接合部温度の最大定格)とパッケージの熱抵抗から算出される許容できる損失電力で、パワー素子(スイッチングトランジスタ)、内蔵型であればICそのものの許容損失です。回路として考えた場合、昨今のパワー素子は基板に表面実装することで、基板を放熱板に利用するものが多くなっていますので(もちろん大電力回路では個別に放熱板を設置する)、パターンレイアウトも大きく関係してきます。いずれにしても、放熱と許容損失の検討は必須ですので、しっかり熱計算をすることは非常に重要です。

以下の表に要点をまとめます。

電源としての重要特性と意味 ポイント
ラインレギュレーション
入力DC電圧の変動に対する出力電圧の変動。%や決められた入力範囲における具体的な変動値で表す。
  • 入力電圧の想定変動範囲で安定した出力が得られること
  • 過渡的な入力変動は別途考慮する
ロードレギュレーション
負荷電流の変動に対する出力電圧の変動。%や決められた負荷変動の範囲の変動値で表す。
  • 必要な出力電圧精度を維持できる負荷供給能力があること
  • 配線の抵抗成分により電源出口と負荷入口では電圧が違うので、特に大電流負荷では注意が必要
効率
入力電力に対する出力電力の比率(%)。
  • 損失を抑えることは発熱を下げることにつながる
  • 発熱は取れる出力電力に制限を与えるばかりか、放熱や冷却のためのスペースやデバイスを必要とし、果ては電源回路や付加回路の信頼性を低下させる要因になる
入力/出力リップル電圧
脈流のことで入力と出力の両方に発生する。
  • 出力にはスイッチングに起因したリップル電圧が必ずある
  • 出力電圧精度はリップルを含む
  • 入力の寄生インダクタンスによるスパイクは要注意
負荷過渡応答
急激に出力負荷電流が変動した場合に、出力電圧が設定値に戻るまでの応答速度。
  • 急激に出力負荷電流が変動した場合は、ロードレギュレーションとは別に短時間の出力変動が生じる。
  • 応答がよい電流モードやヒステリシス(リップル)制御を採用した電源ICを利用して対応できる
許容損失
パッケージの熱抵抗から算出される許容できる損失電力。
  • パワーデバイスの熱計算は必須
  • レイアウト設計も放熱には重要
  • Ta+自己発熱がTj maxを超えてはいけないのが原則

スイッチングレギュレータの特性と評価方法