スイッチング方式AC-DC電源とは-動作原理、基本回路、部品と実装例
2014.05.25
この記事のポイント
・トランス方式にくらべ複雑にはなるが、近年の主流。
・制御ICを利用することで設計は簡単になる。
スイッチング素子を使うAC-DC変換方式を図5に示します。
スイッチング方式は、最初に100VACをダイオードブリッジで整流します。トランス方式では、まずトランスでAC/ACの降圧を行いましたが、スイッチング方式は高いままのAC電圧をそのまま整流します。したがって、ダイオードブリッジは高電圧に耐えうる仕様のものが必要になります。100VACはピーク値では140V程になります。
次にコンデンサを使って平滑します。こちらも高電圧仕様のものを使用します。
続いて、この高いDC電圧を、スイッチング素子をON/OFFすることによってチョッピング(切り分け)をして、高周波トランスを介して二次側にエネルギーを伝達します。この時のON/OFF周波数、つまりスイッチング周波数は、入力ACの周波数である50/60Hzに比べてかなり高い数十kHzの周波数を使い、図5のような方形波のACに変換します。
この高周波のAC電圧は二次側の整流ダイオードで整流され、そしてコンデンサで平滑され、設定されたDC出力電圧に変換されます。図では高周波ACの整流波形が省略されていますが、1つのダイオードを使った半波整流なので図2を参照願います。また、所望のDC電圧に変換するには、図5にあるようにスイッチング素子の制御回路が必要になります。(この回路構成はフライバックと呼ばれる方式の例です。フライバック方式につきまして後述します。)
高いDC電圧を切り分けてACにして、再び整流-平滑によって低いDC電圧に変換する方法は、通常のスイッチングDC-DC変換と同じです。スイッチングDC-DC変換の過程を細分化すると、DCからACに、そしてDCへということになります。ちなみに、3端子レギュレータを使ったリニア方式のDC-DC変換は、単純にDCをDCに変換します。
整流-平滑後のスイッチングDC-DC変換の原理
ACを整流してDCに変換する原理については先に説明しましたので、その後の動作にあたるスイッチング方式のDC-DC変換の原理についても簡単に説明します。
図6は、代表的な制御方法であるPWM(Pulse Width Modulation:パルス幅変調)方式による降圧の原理を示しています。PWMは、周期(周波数)を一定としてONとOFFの時間比、つまりデューティサイクルを調整する制御方法で、様々なアプリケーションで使用されています。PWMでは、DC電圧をスイッチによって必要なデューティサイクルのACに変換し、再び整流してDCに戻すことで所望のDC電圧を得ます。例えば100VDCをスイッチによって周期の25%をON、残りをOFFという25:75のACに変換します。そのACを整流-平滑、つまり平均化してDCにすると電圧は25%分に該当する25VDCに変換されます。実際には、DC-DC変換は電力変換であり、変換効率を加味しなければならないので、図のようにちょうどにはなりませんが、このような原理に基づきます。また、負荷電流が増えれば電圧が降下し、制御回路はパルス幅を増やして電圧を設定値に戻すために帰還制御を行うので、パルス幅も一定ではありません。
話しを整理すると、AC-DC変換は入力のAC電圧をそのまま整流-平滑してDCに変換し、そのDCを再度高周波のACに変換して、再び整流-平滑して所望のDC電圧に変換するという流れになります。前述のトランス方式に比べ、AC-DC変換を2回も行うので複雑に感じるかもしれません。確かに複雑になるのですが、大きなメリットがあるため、近年ではスイッチング方式を採用するAC-DCコンバータが増えてきています。メリットについては後述します。
スイッチング方式に使う部品と実装例
図7の写真は、スイッチング方式のAC-DC変換に必要な部品と回路実装例です。基本構成は図5と同じで、出力電圧をPWM制御回路にフィードバックすることで安定化制御を行っています。
図7:PWMスイッチング方式 AC-DCコンバータの部品と実装の例
部品は先のトランス方式に似ていますが、ダイオードブリッジ、一次側の電解コンデンサ、スイッチング素子(トランジスタ)は、すべて高電圧に対応した仕様のものになります。
トランスは数十kHzの高周波で動作する必要がありますので、高周波トランス、またはスイッチングトランスと呼ばれるものになります。スイッチングトランスのコアは、一般的にフェライトを使用します。
スイッチング素子は、基本的にトランジスタを使用します。パワートランジスタとかスイッチングトランジスタなどいくつか呼び名がありますが、スイッチング電源用の高電力MOSFETがポピュラーになってきています。スイッチングトランジスタは、必要な出力電力に合わせて選択しますが、出力電力があまり大きくない場合には、スイッチングトランジスタを内蔵している制御ICを利用して部品点数を減らすことができます。
出力電圧を安定化する制御回路ですが、トランジスタやOP-Ampなどの個別素子を使用して構成することも可能です。しかしながら最近では、正確な安定化制御はもちろん、様々な保護機能も提供してくれることから、AC-DC変換用ICを使用することが多くなってきています。特にAC-DC電源を回路基板上に載せる場合は、AC-DCコンバータ用ICを中心に設計をするのが現実的かと思います。ちなみに、この回路の制御ICは基板裏の下の方の真ん中あたりに実装されています。SOP8という小さなパッケージですが、制御機能の他、複数の保護機能を備えています。
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