絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイント ーまとめー
2016.02.17
本編では、AC-DCコンバータの「評価編:絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイント」と題して、絶縁型フライバック方式のAC-DCコンバータ回路の性能評価のための測定方法と実測データ、そして、評価する際に性能面だけではなく、正常動作しているかどうかを確認するための重要チェックポイントについて説明してきました。
性能評価に関しては、評価を行う回路を構成するための電源ICの特徴や特性を十分に理解することが重要です。何度か話にだしましたが、近年の電源設計においては電源ICを使うことが一般的で、それゆえに電源ICの理解なしに設計は不可能だからです。また、基本的に使う電源ICのデータシートに基づいて設計を行い、示されている特性や機能がその通りかどうかを確認していきますので、その重要性は理解いただけたと思います。また、評価の基準として、電源ICメーカーが提供している評価用ボードを利用することも非常に有効な手段であることも記しました。
実際の評価に関して、設計した回路が正常に動作しているかどうかを確認するためのチェックポイントと測定方法を説明しました。手順として、電源ICのデータシートに示されている特性グラフや評価ボードの特性と、自身が設計した回路の特性を比較していくわけですが、マージンや潜在的な問題などをチェックしなければ、量産、そして出荷することはできません。そのためのチェックポイントや判断基準は、正に電源設計のノウハウです。社内に継承された技術情報や、個人の経験や実績に基づき、的確かつ短時間で潜在的な問題を発見して確実な設計と製造を行うことが重要です。
当然ながら、これらのノウハウを自身のものにするには、何より設計をして評価を行うことを繰り返すことになります。特にAC-DCコンバータは高電圧を扱いますので、測定に関してまずは安全を確保するための知識と経験が必要です。
以下に、本編で説明してきた項目とキーポイントをまとめました。今一度確認いただければと思います。
<絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイント>
この記事のキーポイント
・性能を評価するということは、設計目標が達成されているかどうかを確認すること。
つまり、設計目標が明確になっていなければ評価はできない。
・電源ICのデータシートをよく理解しなければ評価はできない。
この記事のキーポイント
・実際の設計では、出来上がった回路基板を評価し、設計目標が達成されているかどうかを確認する。
この記事のキーポイント
・電源のパラメータ測定は、基本的な装置があれば割と簡単にできる。
・高電圧を扱うので、扱い方や安全のための知識を習得し、絶対厳守の上作業する。
▶重要チェックポイント:MOSFETのドレイン電圧と電流、および出力ダイオードの耐圧
この記事のキーポイント
・MOSFETのVDSとIDSが定格内であり、異常なスパイクやリンギングがないことを確認する。
・整流ダイオードは、印加される電圧が逆耐圧Vrの定格内であるか、また波形もチェックする。
・メーカーが提供してる評価ボートとの比較が、現実的でよい方法。
この記事のキーポイント
・トランスは飽和させてはならない。
・一次側の電流波形をオシロスコープと電流プローブなどを利用して観察する。
・トランスが飽和している場合は、過大な電流が流れMOSFET等の破壊を引き起こすことがある。
この記事のキーポイント
・Vcc電圧が入力や負荷の変動に対して適切な範囲にあるかチェックする。
・Vcc充電機能が作動しないレベルを、Vcc電圧の最低とする。
・第三巻線、ダイオード、コンデンサによるVcc生成回路の動作を理解する。
この記事のキーポイント
・出力の負荷過渡応答は、帰還回路の位相補償回路を調整して最適化する。
・出力の立上りの波形の最適化も同様。
・これらの評価と調整は相互関係があるので一連の作業とする。
この記事のキーポイント
・素子(チップ)の接合温度(Tj)が定格内であることは、信頼性のみならず安全性も含めて必須の確認事項。
・温度は実測と熱抵抗の考えを利用して求める。
・損失は、スイッチング波形の観測と数式で求める。
・許容損失はデータシートのグラフを参照するが、最終的にはTjに基づく。
この記事のキーポイント
・アルミ電解コンデンサは寿命を意識して使う部品。
・アルミ電解コンデンサの寿命は温度による加速が大きく、一般には「10℃ 2倍則」が適用される。
・劣化による容量抜けは回路動作に障害を与える可能性が高い。
以上、「AC-DC評価編:絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイント」は終了です。
【資料ダウンロード】絶縁型フライバックコンバータ性能評価とチェックポイント
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