アルミ電解コンデンサ-寿命計算と劣化症状「容量抜け」とは
2016.01.19
この記事のポイント
・アルミ電解コンデンサは寿命を意識して使う部品。
・アルミ電解コンデンサの寿命は温度による加速が大きく、一般には「10℃ 2倍則」が適用される。
・劣化による容量抜けは回路動作に障害を与える可能性が高い。
絶縁型フライバックコンバータの性能評価において、仕様以外に確認しておくべき「重要チェックポイント」をして下記の話をしてきましたが、今回は最後のポイント、「電解コンデンサ」の話になります。
昨今、電解コンデンサというと、アルミ電解に加えてタンタルや機能性高分子の電解コンデンサが存在しますが、ここでの話は、基本的に最も標準的なアルミ電解コンデンサをイメージしていただければと思います。アルミ電解コンデンサは比較的安価で大容量を得られるので、特にAC-DCコンバータの場合の入出力の大容量コンデンサには、標準的な選択肢だと思います。そういった意味で、あまり細かい検討がなされず使用されるケースが無きにしも非ずなので、ここで注意すべき事項を確認します。
アルミ電解コンデンサは寿命を意識して使う部品
どんな部品にも寿命はあるのですが、例えばICなどの半導体部品は、突発的なものを除けば、その寿命予測からは特に寿命を意識しなくても機器の耐用年数を十分に満足します。ところが、一般にアルミ電解コンデンサの寿命は比較的短く、稼働中の電源に経年変化による性能劣化が発生する可能性があります。
アルミ電解コンデンサの寿命は温度による加速が大きく、一般には「10℃ 2倍則」とも呼ばれている「アレニウスの法則」に則ります。これは、温度が10℃上がると加速係数は2倍になり、寿命は1/2になるという意味です。もちろん、その逆に10℃下げることができると寿命は2倍になるという意味でもあります(実際の個別寿命算出は、コンデンサメーカー提供の計算式などにて算出願います)。
コンデンサにリップル電流が流れると、内部インピーダンスによる損失のため発熱が起こります。アルミ電解コンデンサは比較的ESRが大きく、流れるリップル電流が大きな場合はそれなりの発熱が生じることを認識しておくことが重要です。
例えば、「105℃/2000時間」という予測寿命のアルミ電解コンデンサを、75℃で使うことができれば16,000時間の寿命予測となりますが、95℃になれば4000時間の寿命を想定する必要があります。また、この予測寿命時間を見て、ICなどに比べるとはるかに短いことがわかると思います。
アルミ電解コンデンサが劣化すると
さて、アルミ電解コンデンサが寿命により劣化するとどうなるのか、ということですが、基本的には静電容量が低下します。これを液漏れや容量抜けなどということもあります。電源回路としてみれば、容量が低下すると本来必要だった容量が得られないので、以下のような症状が発生し、給電されているデバイスの動作に問題が生じます。
- 入力コンデンサの場合⇒リップル電圧の上昇、保持時間の低下(蓄電できる電荷が少ないため)
- 出力コンデンサの場合⇒リップル電圧の上昇、出力制御ループの安定性低下(応答に影響が出る)
注意点
基本的には、なるべくコンデンサの温度を低く抑えることになりますが、大原則として以下を押さえてください。
- 使用するコンデンサのリップル電流定格を確認し、回路のリップル電流を十分カバーする定格のものを選択する。
- 評価時には右図にように実際のリップル電流を確認する。
- 同様に、コンデンサの温度も十分に確認して寿命予測を行う。
- 条件によっては、ディレーティングや、実装は発熱体から遠ざけるなど、少しでも温度を下げる対策を講じる。
- 寿命予測を行い、それに基づく予測寿命の提示や保守保全を行う。
以上、アルミ電解コンデンサに関する注意点を記しました。電源設計者にとっては既知の内容かもしれませんが、設計ではこれらを考慮した部品を使ったのに、量産時に同じ容量の汎用アルミ電解コンデンサに変更されてしまい、市場において問題が発生したというような話は聞かないでもありませんので要注意です。扱いなれた部品でも、注意が必要なことは多々ありますので、ここで取り上げました。
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