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絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイント

重要チェックポイント:温度測定と損失の測定

絶縁型フライバックコンバータの性能評価に関して、仕様以外に確認しておくべき「重要チェックポイント」として、「温度測定と損失の測定」に関する説明に入ります。

この項では、温度と損失の測定と算出方法を説明しますが、その目的は電源ICのジャンクション(接合部)温度Tjが、実動作の最大温度条件においても最大定格Tjmaxを超えないことを確認することです。最大定格は絶対に超えてはいけない値ですので、これを 超えるような状態があってはなりません。もし、超えるようなことがあれば、著しく寿命が短くなったり、破壊に至る可能性があります。 また、定格を超えないということの他に、信頼性の観点から実際のTjを知ってディレーティングを行うことにもつながります。

合わせて、損失のチェックが必要なのは、損失=発熱となるからです。許容損失の観点から見れば、実際の損失が許容損失以下であることがチェックポイントになりますが、最終的にはTjがどのくらいかという原点に行きつきます。関連して、損失要因を把握することで、場合によっては損失を改善し発熱を低減することができます。もちろん、これは効率改善にもつながります。

【チェック条件】
  • 入力電圧:最大
  • 負荷電流:最大
  • 環境:温度条件の上限
【チェックポイント】
  • 電源ICのTjが最大定格を超えていないか
  • 損失がデータシートに示されている許容損失以下か

温度測定

今回の事例に使った電源ICはパワートランジスタ内蔵タイプなので、電源用ICのジャンクション温度を測定します。ちなみに、パワートランジスタが外付けのものは、第一の発熱源は外付けのパワートランジスタなのですが、コントローラICのパワートランジスタゲートドライブ用の電流が小さくない場合があるので要注意です。

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さて、ジャンクション温度Tjを知る必要があるのですが、ICチップは大抵パッケージの中に樹脂封止されているので、直接的に測定することはできません。そこで、周囲温度Taやケース(パッケージ)温度Tcの実測値と熱抵抗に基づいてTjを算出します。右の図は、熱抵抗と温度の関係を示しています。熱抵抗θjaはジャンクション(チップ)から雰囲気中までの全熱抵抗であり、TjはTa+自己発熱、発熱は熱抵抗×電力、という基本から成り立つ以下の式で、Tjを求めることができます。

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熱抵抗に関しては、ICメーカーが提供しているものを参照します。データシートなどに記載がない場合は、問い合わせてみてください。

TaもしくはTcを実測するわけですが、Taの測定は意外と大変です。測定は熱電対で周囲の雰囲気温度を測ればよいのですが、発熱体の近くと発熱体から離れた場所ではかなり温度が違います。また、実機では筐体の中だったり空冷ファンが回って空気が動いているなど、どの条件での雰囲気温度をTaとするかという問題があります。経験則を用いて解決することができないわけではありませんが難問です。

それに対してTcの測定は、近年、サーモグラフィや放射温度計などが普及したので、比較的簡単にできるようになりました。もちろん、熱電対を使って測定することも可能ですが、熱電対をパッケージに接触させる必要があり、熱電対による放熱が起こるなど、正確な測定はけっこう大変です。まちがっても、熱電対の先をテープでパッケージ上面に貼り付けて測定しないでください!昨今の事情を考えると、赤外線を利用した非接触温度計を使うのが良策です。

もう一つ、パッケージのどこの温度を、この計算で使うTcとするかということがあります。上のパッケージの図を見ていただければ容易に想像できると思いますが、パワートランジスタの真上とあまり電力を消費しないコントロールチップの上ではTcは異なります。基本的には、パッケージ表面温度が一番高いところの値を使います。そういう意味では、サーモグラフィは便利です。ちなみに熱電対の場合は、他に細かい条件がありますが、パッケージの中央で測るというのが一般的だと思います。

損失の測定

熱抵抗、TcもしくはTaのデータが得られれば、上記の式での計算に必要なのはP、つまり消費電力=損失(電力)となります。損失は単純には電圧×電流で求められます。例えば、LDOリニアレギュレータでは、(入力電圧-出力電圧)×(出力電流+自己消費電流)が損失している電力になりますが、スイッチングレギュレータの場合は、スイッチングにより電力を切り出しているので、平均の消費電力を求める必要があり、その算出は少し複雑になります。以下に原則的な算出式を示します。

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基本的に、平均電力Pは、電流と電圧の積を時間で積分した値を、時間Tで割り算したものになります。これを実際のスイッチングに当てはめます。考え方として、1周期には大まかに、オフ→オン(T1~T2)、オン期間(T2~T3)、オン→オフ(T3~T4)、オフ期間(T4~T5)の4つの状態があるとして、以下のように4つの区間に分けて計算します。実際の積分計算は、積分公式を用います。

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この計算を行うためには、上述の4つの区間の時間と電圧/電流が読み取れる波形データが必要で、特に遷移時の波形は立ち上がり/立ち下がり時間とセトリングの時間の電圧/電流との関係がよく分かる波形を取得する必要があります(右上の波形データ参照)。これは、読み値を上記に式に代入して計算するためです。

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まとめ

測定と計算によって求められたP、損失(消費電力)を、上記のTjの算出式に代入して、Tjを求めます。Tjの最大定格は、150℃なので、それ以下であることを確認します。

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許容損失は、右のグラフ(BM2P013のデータシートから抜粋、PCB : 74.2mm×74.2mm×1.6mm ガラスエポキシ 2 層基板実装時)から求めます。ICとしては、Ta = 105℃が動作温度範囲ですので、その際に約750mWを許容できるのがわかります。電源としての動作温度の最大値を使う場合には、IC近辺のTaが必要になります。いずれの温度条件でも、損失が許容損失以内であるのが最低条件です。

この項では、理論的な説明を中心にしましたが、実際の温度や損失の計算方法や計算例がロームのウェブサイトから提供されていますので、是非とも参照願います。

キーポイント

・素子(チップ)の接合温度(Tj)が定格内であることは、信頼性のみならず安全性も含めて必須の確認事項。

・温度は実測と熱抵抗の考えを利用して求める。

・損失は、スイッチング波形の観測と数式で求める。

・許容損失はデータシートのグラフを参照するが、最終的にはTjに基づく。


絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイント