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絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイント

重要チェックポイント:出力過渡応答と出力電圧立上がり波形

絶縁型フライバックコンバータの性能評価に関して、仕様以外に確認しておくべき「重要チェックポイント」も中盤に入りました。今回は「出力過渡応答と出力電圧立上り波形」について説明します。

出力過渡応答

出力電圧の重要な特性の一つに過渡応答特性があります。この過渡とは出力電流、つまり負荷電流が急激に変動することを意味していますので、正確に表現すると出力電圧負荷過渡応答特性となります。英語の用語でカタカナ語を使うこともあり、過渡応答はトランジェントレスポンス(transient response)と呼ばれています。

この特性が重要な理由は、負荷電流に対する出力電圧の安定性にかかわる項目であること、外付け回路の部品定数によって最適化が可能である、言い換えれば特性を確認してよりよい特性に調整できるからです。

過渡応答の確認は、以下の条件の組み合わせにおいて電圧波形を観察します。オシロスコープ、負荷装置、そして負荷電流波形も確認すべきなので、電流プローブも必要です。

<確認条件>
・入力電圧:最小、最大
・負荷電流:最小→最大、最小←最大
・環境:温度条件の上限および下限

負荷の切り替えを連続的に行うと、左下の波形図のような波形が観察されるはずです。負荷電流が急激に減少すると出力電圧は一瞬持ち上がり、ある時間をもってほぼ設定電圧に戻ります。負荷電流が急増した場合はこの逆で、出力電圧は一瞬低下して、ほぼ元に戻ります。観察のポイントは、
1)出力電圧の変動がどのくらいの時間で安定状態に回復する(戻る)のか、
2)出力電圧の変動にリンギング、オーバーシュートやアンダーシュートなどの波形の乱れがないか、
の2点になります。

1)に関しては、変動電圧が小さく、安定状態に戻る時間が速い方が望ましい特性、つまり過渡応答が高速で、変動の収束が速いと言えます。2)に関しては、波形図で説明されているように、リンギングなどがないのがベストです。左下の波形図は良好な例です。

もし、過渡応答特性が要求を満たさない場合は、帰還ループの位相余裕とゲイン余裕を調整することになります。具体的には、右上の回路図で示した関連する外付け回路の部品定数を調整します。これらの部品を試行錯誤で調整することも可能ですが、経験がないと何をどのくらい調整するとよいのか見当が付きづらいと思います。定量的に位相とゲインの状態を測定し、余裕度を確認して調整していくのが最初のうちは確実な方法だと思います。測定には、FRA(周波数特性分析装置)を使うのが便利で簡単です。

調整においては、一般に応答速度を速めると安定性が低下する傾向にありますので、位相余裕を維持しながら最も早い応答が得られるように調整することになります。念のために申し上げますが、負荷過渡による出力変動をゼロにすることはできません。

出力電圧立上り波形

こちらも出力電圧波形の確認になりますが、入力電源をオンにした時の出力電圧の立上り特性を観察します。方法や測定器は渡応答特性とほぼ同じなので、一連の確認としてセットにすると能率のよい評価ができます。違いは、出力負荷電流を連続して切り替える必要がないことになります。

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<確認条件>
・入力電圧:最小、最大
・負荷電流:最小、最大
・環境:温度条件の上限および下限

※リンギング、オーバーシュートやアンダーシュートがないか確認する。

確認は上記条件の組み合わせになります。例えば、入力電圧最小、負荷電流最大、温度下限という条件をセットして、入力電源をオンしたときの出力電圧波形を確認します。これはワンショットで確認すべきです。観察するポイントは、出力波形にリンギング、オーバーシュートやアンダーシュートが発生しているか否かになります。これらが発生すると、出力電圧が安定するまでに必要以上の時間を要するだけではなく、あまり大きな変動があると、給電されるデバイスが誤動作したりリセットがかかる可能性があります。

実は、これも出力の応答特性の一つと考えることができます。そういう意味でも過渡応答との兼ね合いがあるので、これら一連の確認であると言えます。リンギング、オーバーシュートやアンダーシュートの最適化は、過渡応答と同じように位相とゲインの余裕を調整することで得られます。それとは別にソフトスタートや負荷容量の関係で立上り波形は変わってくるので、何によって観察される波形がそうなっているかということも検討する必要があります。

示した波形図は良好な特性を示しています。

キーポイント

・出力の負荷過渡応答は、帰還回路の位相補償回路を調整して最適化する。

・出力の立上りの波形の最適化も同様。

・これらの評価と調整は相互関係があるので一連の作業とする。


絶縁型フライバックコンバータの性能評価とチェックポイント