Vccとは?Vcc電圧、Vcc回路、Vcc要件

2015.10.20

この記事のポイント

・Vcc電圧が入力や負荷の変動に対して適切な範囲にあるかチェックする。

・Vcc充電機能が作動しないレベルを、Vcc電圧の最低とする。

・第三巻線、ダイオード、コンデンサによるVcc生成回路の動作を理解する。

絶縁型フライバックコンバータの性能評価に関して、仕様以外に確認しておくべき「重要チェックポイント」について、今回は「Vcc電圧」の説明をします。

Vcc電圧

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Vcc電圧は、電源ICが動作するための電源です。この回路では、トランスを利用して、入力電圧を降圧して電源ICのVcc電圧を生成しています。

最初に、この回路についておさらいしておきます。基本的にどんなICでも、動作するために電源は必要です。もちろん、他のデバイスのための電源となる電源ICも同じです。DC-DCコンバータの場合、入力電圧はDC電圧で、一般的には入力源が高電圧であっても100VDC以下です。ところが、AC-DCコンバータの場合は、まず、入力はAC電圧です。そして、国内仕様でも入力は100VAC、ユニバーサル入力では許容差を入れると85~264VACが入力になります。この設計では入力は後者になりますが、いずれにせよ通常のAC-DCコンバータ用の電源ICはこのAC電圧をVccとして直接利用することはできません。

この回路では、Vccに適するDC電圧を生成するために、トランスの一次巻線と二次巻線に加えて第三の巻線(補助巻線)を設け、入力AC電圧を降圧および整流して低DC電圧に変換する方法を取っています。

第三巻線に発生する電圧はダイオードD4によって整流しますが、大きなリップル含んでいるのでコンデンサC5により平滑します。R5はサージによるVcc電圧上昇を制限する抵抗です。詳細を確かめたい場合は、設計編のこちらを参照してください。

さて、ここからが本題です。この電源ICのVcc電圧は、8.9V~26Vが推奨動作範囲になっています。もちろんDC電圧です。ここでのチェックポイントは、このVcc電圧が適正であるかどうかという点になりますが、電圧上昇を制限するR5が適正で十分に機能しているかに注目する必要があります。

通常動作において、MOSFETがオンからオフになった瞬間に、トランスのリーケージインダクタンスによりサージ電圧が発生します。このサージ電圧は第三巻線により誘起され、結果的にVcc電圧を上昇させます。リーケージインダクタンスは、トランス仕様によりことなるので、やはり実測により、R5が実際に発生する電圧上昇を許容範囲に抑えているかをしっかり確認する必要があります。電圧上昇により許容範囲を超える場合はR5の値を少し増やしますが、あまり大きくすると損失が増えるので、通常は5~22Ω程度が適切な範囲です。

<チェックポイントと条件>

  • 入力電圧:最小および最大、負荷:最小(無負荷)時にVcc電圧が9.7V以上であること
  • 入力電圧:最小および最大、負荷:最大時にVcc電圧が26V未満であること

Vcc電圧はオシロスコープを使って、電圧波形を確認するべきです。その際には、第三巻線でのAC波形やサージの大きさなども見て、あまりにサージが大きい場合は、その原因が何かを確認したほうがよいでしょう。

条件に関して、推奨動作範囲は8.9V~26Vなのに対して、最小電圧を9.7Vとしています。これは、Vccが降下して9.7Vを切ると、Vcc充電機能が起動し、VH端子から起動回路を介してVccを充電しVccを上昇させる動作を無用に作動させないためです。この機能はこの電源ICが持つ起動を確実にするためのもので、これが働くこと自体は問題ありません。しかし、起動後に安定状態になると起動回路をオフにして無駄な電力消費を押さえるようにしているため、本来の障害以外でこの回路を作動させる必要はありません。そういった意味で、Vcc充電機能が作動する9.7Vを切らないようにR5を設定します。この電源ICのVcc充電機能については、データシートの9ページを参照ください。ちなみに、推奨動作範囲の最小電圧8.9Vは、Vcc降下時のUVLO作動電圧の最大値です。 

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電源ICを使った絶縁型フライバック方式AC-DCコンバータの性能評価方法を、実測データ例を交えて解説したハンドブックです。また、重要チェックポイントについても説明します

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