重要チェックポイント:MOSFETのVDSとIDS、出力整流ダイオードの耐圧

2015.08.18

この記事のポイント

・MOSFETのVDSとIDSが定格内であり、異常なスパイクやリンギングがないことを確認する。

・整流ダイオードは、印加される電圧が逆耐圧Vrの定格内であるか、また波形もチェックする。

・メーカーが提供してる評価ボートとの比較が、現実でよい方法。

前項までは、絶縁型フライバックコンバータの机上の設計から始まり、試作をして評価に入り、設計目標、つまり出力電圧や効率という、電源としての仕様を満たしているかどうかの評価の話をしてきました。ここからは、仕様以外に確認しておくべき重要チェックポイントについて説明をして行きます。以下に予定の項目を記しておきます。

・MOSFETのドレイン電圧と電流、および出力整流ダイオードの耐圧

トランスの飽和

Vcc電圧

出力過渡応答と出力電圧立上り波形

・温度測定と損失の測定

・電解コンデンサ

最初に、通常の仕様の評価と、これから説明するチェックポイントの違いを説明しておきます。以下の表は、例題として使っている回路の設計目標で、何度かでてきているものです。

パラメータ Min Typ. Max 単位 条件
入力電圧 90 264 VAC
無負荷時入力電力 50 mW 入力:100VAC/230VAC
出力電圧 11.4 12 12.6 V
出力電流 1.5 A
出力リップル電圧 100 mV 帯域幅20MHz
効率 80 % 出力:12V/1.5A

これらの項目や数値は、電源の仕様としては一般的なもので、その測定方法などはすでに説明しました。例えば、出力電圧は、条件を設定して、まずは電圧計で電圧を測定して、測定値が設定した上限と下限の内側に入っていれば、仕様を満たしているという判断ができます。

しかしなら、実際にはもう少し詳しく、もしくは別の見方で評価して、事前に潜在的な問題やマージン的なものを確認して、量産がスムーズに進むようにしておくことは非常に重要です。このレベルの評価には、「何をどう見るか」という経験とノウハウが必要です。

MOSFETのドレイン電圧と電流

右の図は、例題に使っているMOSFET内蔵の電源IC、BM2P014の出力段の内部ブロックと、フライバックコンバータ構成時の外付け回路の一部です。

内蔵のMOSFETは、ICのDRAIN端子にドレインが、SOURCE端子にソースがつながっています。このMOSFETはトランスの1次側をスイッチして2次側にエネルギーを伝達する役目をしており、電源としての出力を生成する重要な機能を担っています。

当然のことながら、ここでのスイッチング動作や波形がおかしければ正常な出力は得られません。

以下に、このMOSFET(IC)のVDSとIDSを示します。

左は、起動時の波形で、右は定常動作での波形です。起動時は、入力電圧が動作電圧に達するとスイッチング動作が始まり、VDSは基本的にVIN+VORとGND電位のスイッチ波形を示します。IDSはそれに連動します。この波形は、おおよそ良好な例です。その理由としては、起動後特に乱れがなく定常動作に移行していることと、スイッチングに関連して発生しているスパイク出てはいますが、突飛なものは見られず、MOSFETの定格(650V)以内であることが挙げられます。

右の定常時の波形は時間軸を拡大してあり、スイッチにともなうVDSとIDSの関係がわかります。ここでは、各波形が回路構成から想定できるものであること、異常なスパイクやリンギング、果ては発振などが生じていないことを確認します。(回路動作や波形の詳細は、「絶縁型フライバックコンバータの基本」を参照ください。)

基本的に、VDSとIDSがスパイクやリンギングを含めて定格を超えていないことを確認します。条件として、入力電圧、負荷電流、温度に関して、上限と下限での測定マトリクスを組みます。これで、各条件に対する特性の変動傾向を観察でき、それを回路動作と部品の特性から裏付けまでを行うと、以後のノウハウとなります。

出力整流ダイオードの耐圧

先に示した回路図の2次側にある、出力整流ダイオードに印加されるVr、逆電圧に問題がないか確認します。このダイオードには、VIN×巻線比+VOUTの最大値が逆電圧としてかかります。実際に印加されている電圧が、Vrの定格を超えていないか、異常な波形になっていないかを観察します。(回路動作や波形の詳細は、「絶縁型フライバックコンバータの基本」を参照ください。)

右の波形は、出力整流ダイオードのVrの波形の一例になります。

実際に観察される波形や電圧、電流は、まったくの計算値通りで、教科書にあるような理想的なものとは異なります。特に波形については、寄生容量やインダクタンスなど外乱要因があり、測定方法の影響も受けます。観察しているものが良いのか悪いのかは経験がないと判断が難しいと思います。その際に役に立つのは、メーカーが提供している評価ボードです。多少回路は違っても、基本的には理想に近い動作状態にあるので、それと自身のものを比較するのは現実的なよい方法だと思います。

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電源ICを使った絶縁型フライバック方式AC-DCコンバータの性能評価方法を、実測データ例を交えて解説したハンドブックです。また、重要チェックポイントについても説明します

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