評価ボードを使った性能評価:測定方法と結果
2015.07.21
この記事のポイント
・電源のパラメータ測定は、基本的な装置があれば割と簡単にできる。
・高電圧を扱うので、扱い方や安全のための知識を習得し、絶対厳守の上作業する。
この項では、前項で確認した回路と実装基板を使って、設計目標をクリアしているかの評価を行うための測定方法と測定結果を示します。実装基板は、実際にはBM2P014という電源ICの評価用のもので、販売もされています。
この表は、前項で示したものと同じで、今回の設計目標です。
パラメータ | Min | Typ. | Max | 単位 | 条件 |
---|---|---|---|---|---|
入力電圧 | 90 | – | 264 | VAC | – |
無負荷時入力電力 | – | – | 50 | mW | 入力:100VAC/230VAC |
出力電圧 | 11.4 | 12 | 12.6 | V | – |
出力電流 | 1.5 | – | – | A | – |
出力リップル電圧 | – | – | 100 | mV | 帯域幅20MHz |
効率 | 80 | – | – | % | 出力:12V/1.5A |
記載のあるパラメータを測定します。以下は、測定方法および条件と使用する測定器です。また、測定ポイントも示します。
パラメータ | 条件 | 計測 |
---|---|---|
入力電圧 | 昇降圧変圧器にて90VAC、100VAC、230VAC、264VACを印加 | 電圧計(AC)、電力計 |
入力電流 | 各入力電圧、出力負荷電流時に測定 | クランプ電流計、電力計 |
入力電力 | 入力電力を測定 | 電圧計(AC)、電力計 クランプ電流計(AC) |
出力電圧 | 各入力電圧、出力負荷電流時に測定 | 電圧計(DC) |
出力電流 | 可変負荷装置などにて0A~1.5A | 電流計(DC) |
出力リップル電圧 | オシロスコープにて波形観察 | オシロスコープ |
効率 | 上記測定結果から計算 | 出力電力÷入力電圧(%) |
パラメータは見ての通り、基本的には電圧と電流です。マルチメータと電力計があれば、簡単に測ることができます。交流の測定には、やはり電力計が便利です。もちろん、クランプ電流計でも対応できます。
出力リップル電圧は、オシロスコープで出力波形を観察します。出力リップルは、ピーク電圧を知る必要があるので、オシロスコープでの観察は必須です。
条件設定のために必要になるものは、入力として、100VACから90VAC~264VACを発生させるための昇降圧が可能な変圧器、そして出力の負荷電流を設定するために可変負荷装置です。
注意事項は、高電圧を扱うことです。入力電圧は最大264VACを扱います。また、1次側の整流電圧は372VDCになります。言うまでもありませんが、生命にかかわります。短絡や接触には最大の注意を払い、必ず安全対策をして測定を行ってください。
以下に実測値を示します。
最低入力電圧、公称入力電圧、最大入力電圧で、負荷電流をゼロから10mA、100mA、500mA、1A、1.5Aまでの6条件で測定しました。効率は計算で求めます。円で囲んだ数値は、設計目標に該当するものです。
出力リップル電圧は、以下の波形でした。オシロスコープのプローブですが、標準のクリップ付グランド線でグランドを取ると、波形に実際には存在しない乱れやスパイクが乗ることがあります。プローブを直接差し込む専用コネクタを使用するが一番ですが、写真のようにできるだけグランド線を短くして測定するだけでもかなり効果はあります。
それでは、測定結果をまとめます。
パラメータ | Min | Typ. | Max | 単位 | 結果 |
---|---|---|---|---|---|
入力電圧 | 90 | – | 264 | VAC | この範囲において正常動作 |
無負荷時入力電力 | – | – | 50 | mW | 入力100VAC時:32mW 入力230VAC時:36mW |
出力電圧 | 11.4 | 12 | 12.6 | V | 最低:12.08V 最大:12.09V |
出力電流 | 1.5 | – | – | A | 1.5Aで正常動作 |
出力リップル電圧 | – | – | 100 | mV | 74.0mVp-p |
効率 @1.5A | 80 | – | – | % | 最小:83.8% 最大:84.4% |
結果は、各パラメータの最大値、最小値を満たしており、設計目標を達成しています。もちろん、使った回路、部品、基板は評価用のものなので、この設計目標を達成するように調整や修正が済んでいます。実際の設計においては、満足しない項目が出てきます。この作業の目的はデバッグなので、問題を見つけて、その原因を突き止め、処置をすることにあります。
また、測定においては、設定条件ちょうど、例えば入力は90VAC~264VACの範囲だけではなく、部品のマージンを考慮した上で、多少条件を厳しくしてみて傾向も確認しておくべきです。この場合であれば、90VAC~264VACは±10%のマージンなので、±15%ぐらいまでは確認してみます。「±10%では良好だったが±11%にしたら急に動作しなくなった」ということがあるかもしれません。これは、マージンがないという判断になり、通常は見直しに入ります。
もし、この設計目標値を電源の保証値とするのであれば、どのくらいのマージンをもたせるか、別途基準を決めておく必要があります。
【資料ダウンロード】絶縁型フライバックコンバータ性能評価とチェックポイント
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