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SiC-MOSFETを使った絶縁型擬似共振コンバータの設計事例

主要部品選定:スナバ回路関連部品

今回は、電源IC BD7682FJの機能設定部品ではなく、電源回路にはよく利用するスナバ回路の構成部品と定数について説明します。スナバ回路は今回の擬似共振コンバータに限らず、別章で例示したフライバックコンバータにも用います。本項と合わせて、「絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-CINとスナバ」、「絶縁型フライバックコンバータの基本:フライバックコンバータの動作とスナバ」も参照ください。

スナバ回路とは

スナバ回路はサージを抑制する回路です。この例では入力のサージ抑制のために入力に設けますが、出力に用いることもあります。入力はトランスの一次側に接続するため、トランスのリーケージインダクタンスにより、MOSFETがオンからオフになった瞬間に大きなサージ電圧(スパイクノイズ)が発生します。このサージ電圧は、MOSFETのドレイン-ソース間に印加されるため、発生するサージ電圧がMOSFETの耐圧を超えるとMOSFETが破壊する可能性があります。これを防止するためにRCD(抵抗、コンデンサ、ダイオード)によるスナバ回路を挿入し、サージ電圧を抑制します。ほとんどのケースでこのサージは発生するので、最初からスナバ回路を設けることを推奨します。

スナバ回路:Rsnubber1、Csnubber1、およびD13、D14、D15、D16

この例に使うスナバ回路は、抵抗Rsnubber1、コンデンサCsnubber1、そしてダイオードD13、D14、D15、D16で構成されており、D15とD16を除けば典型的なRCDスナバ回路です。最初にクランプ電圧およびクランプリップル電圧を決定し、R、C、Dの順で定数を決めていきます。

1)クランプ電圧(Vclamp)、クランプリップル電圧(Vripple)

クランプ電圧は、MOSFETの耐圧からマージンを考慮して決定します。マージンは20%とします。

Vclamp=1700V×0.8=1360V

クランプリップル電圧(Vripple)は、50V程度とします。

2)抵抗Rsnubber1

Rsnubber1は、以下の条件を満たすように選定します。

A5_11_graf02

A5_11_graf01

ここで、リーケージインダクタンスLleak=Lp×10%=1750µH×10%=175µHとします。

以下の式より、Po=25W、VIN(max)=900V時のIpとfswを算出します。

A5_11_graf_03

これにより、

A5_11_graf_04

fswが161kHzから120kHzになっているのは、以前説明したのと同じで、電源ICの最大スイッチング周波数が120kHzであるためです。Rsnubber1は、計算結果の253kΩより小さな値なので200kΩとします。

Rsnubber1の損失P_Rsnubber1は、以下の式で計算できます。

A5_11_graf_05

マージンを考慮して、2W以上とします。結果として、Rsnubber1は2Wの200kΩとします。

3)Csnubbe1
Csnubber1の静電容量は以下の式で計算します。

A5_11_graf_06

1607pFより大きな容量ということで2200pFを選択します。

Csnubber1の耐圧は、Csnubber1に印加される電圧は、VclampからVIN(MAX)を差し引いた電圧、1360V-900=460Vから、マージンを考慮して600V以上とします。今回は、2200pF、2kV、10%、X7R、1210パッケージのセラミックコンデンサを使用します。

4)D13、D14
4つのダイオードのうちD13とD14は、ファストリカバリーダイオードを使用します。耐圧は、MOSFETのVds(max)=1700V以上の電圧にします。今回は汎用のUF4007(1000V、1A)を2個直列に使います。

サージ電圧は、トランスのリーケージインダクタンスの他に、基板薄膜配線の寄生成分の影響も受けるので、実機の基板に組み込んだ状態でVdsを確認し、実際の電圧に応じてスナバ回路の調整を行う必要があります。

5)D15、D16
これらのダイオードは、サージ吸収素子であるTVS(トランジェントボルテージサプレッサ)ダイオードです。より高い保護性能を求める場合には、TVSを追加して過渡的なスパイスノイズをクランプすることができます。MOSFETスイッチング時の波形を確認して、使用するかどうか決定します。この部分にかかる計算上の電圧はCsnubber1に印加される電圧と同じ460Vであることから、クランプ電圧274Vの1.5KE200Aを2個直列に使い、これ以上の過渡電圧をクランプします。

キーポイント

・入力におけるトランスのリーケージインダクタに起因するサージを抑制するためにスナバ回路を組み込む。

・スナバ回路はRCDの構成が基本だが、より高い保護のためにTVSダイオードを追加することができる。


PWM方式フライバックコンバータ設計手法