バックコンバータとは-基本動作および不連続モードと連続モード

2016.04.12

この記事のポイント

・降圧コンバータの動作には連続モードと不連続モードがある。

・DC-DC変換では連続モードが一般的だが、60W程度のAC-DC変換では不連続モードを利用することが多い。

非絶縁型AC-DCコンバータ設計に関連して、最初に回路動作を説明します。例とするAC-DCコンバータは、一般にバック(buck)コンバータと呼ばれるものです。本来バックコンバータは降圧コンバータの意味で、DC-DCコンバータにおいても使われる呼び名です。ただ、諸説はあると思いますが、従来の標準的な降圧コンバータがダイオード整流式(非同期式)であったことから、慣習的にダイオード整流式の降圧コンバータをバックコンバータと呼ぶ向きもあります。呼び名はさておき、降圧コンバータにはいくつかの降圧方式があり、この例題の降圧コンバータは先に述べたダイオード整流式です。

バックコンバータの動作

以下に、基本的な降圧コンバータのモデルを使い、その動作を説明します。基本動作から電流経路や各ノードの性質を理解することにより、周辺部品の選定基準や注意すべきことが見えてきます。図では、ハイサイドのトランジスタとローサイドのダイオードをスイッチに置き換えて模式的に説明しています。回路原理はDC-DCコンバータのダイオード整流と同じですが、AC電圧を整流した高電圧を直接スイッチして降圧変換するので、スイッチとなるトランジスタやダイオードは、例えば600V耐圧といった高耐圧のものが必要になります。

A4_2_ton
・ハイサイドスイッチ(トランジスタ)がオンすると、
 インダクタLに電流ILが流れ、エネルギーが蓄えられる
・この時、ローサイドスイッチ(ダイオード)は
 オフしている
・インダクタ電流ILは以下の式で表される
 (ton:オン時間)

A4_2_fton
A4_2_toff
・ハイサイドスイッチ(トランジスタ)がオフすると、
 インダクタに蓄えられたエネルギーがローサイド
 スイッチ(ダイオード)を通じて出力される
・この時、ハイサイドスイッチ(トランジスタ)は
 オフしている
・インダクタ電流ILは以下の式で表される
 (toff:オフ時間)

A4_2_ftoff

不連続モードと連続モード

スイッチング動作には、2つのモード、不連続モードと連続モードがあります。以下の表に比較を示しました。

比較項目の「動作」に示したのは、トランスの一次巻線と二次巻線に流れる電流波形です。不連続モードは、インダクタ電流ILが途切れる期間があることから不連続モードを呼ばれます。それに対して連続モードはインダクタ電流がゼロになる期間はありません。

各モードにおいて、インダクタ、整流ダイオード、スイッチングトランジスタ、効率がどの様な傾向があるかを、矢印で示してあります。「↑」は上昇、「↓」は降下の意味です。

連続モードの場合、スイッチンオン時、整流ダイオードの逆回復時間(trr)の間に逆電流が流れ、この逆電流による損失が発生します。低電圧のスイッチングDC-DC変換では、整流ダイオードの逆電圧が低く逆電流も小さいので、出力リップル電圧や高調波の低減など優先して連続モードを使うことが一般的です。それに対してAC-DC変換では、ダイオードの逆電圧が高く大きな逆電流が流れるので、損失を低減するために逆電流が流れない不連続モードで使用することが一般的です。ただし、ピーク電流が大きくなりますので、負荷が大きい場合には連続モードで動作させることもあります。

それぞれにメリットとデメリットがありますが、50~60W程度までなら不連続モードを選択するのが一般的です。それ以上の出力電力の場合は、許容できるトランスのサイズなどを考慮して判断することになります。今回の設計例では、不連続モードを使用します。

A4_2_tab

【資料ダウンロード】非絶縁型バックコンバータの設計事例

絶縁型の「PWM方式フライバックコンバータ設計手法」に続いて、AC-DCコンバータICを使った非絶縁型バック(降圧)コンバータの設計方法を解説しています。

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AC-DC コンバータ

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