電源設計の技術情報サイト

技術資料ダウンロード

AC/DC

AC/DC PWM方式フライバックコンバータ設計手法

まとめ

16A_graf01

本編では、「AC/DC PWM方式フライバックコンバータ設計手法」と題して、絶縁型フライバックコンバータの基本をおさらいし、設計手順、仕様決定、電源ICの選択、そして実際の回路設計と基板レイアウトまでを説明してきましたが、今回の「まとめ」をもって最後になります。

スイッチング電源回路は基本的にアナログ回路であり、その設計原則に変わりはありません。ただし、スイッチングという大電流をオンオフする動作を含むことから、高調波やEMIといったものを加味した設計が必要になります。

AC/DCコンバータという点では、数百ボルトの高電圧を扱うため、センサー回路などとは違い高耐圧部品を必要するので、絶縁や高耐圧部品の知識が必要になります。

絶縁電源の観点からは、トランス設計が必要になります。シンプルな部品でありながら、扱いの経験がないと敬遠されがちな部品ですが、電源回路においては基本的かつ非常に重要な部品です。

部品定数の決定においては、計算式で定数が求められるものと、大体の回路条件からおおよその値を経験的に用いるものが出てきました。マージンの決め方を含め、経験則によるものは、残念ながら王道はなく、設計、試作、評価を繰り返して身につくものです。
いずれにしても、アナログ回路であることから、「大体このくらい」といった定数の決め方が多々出てきて、中には納得がいかないとことがあったかもしれませんが、逆に言えばその定数ちょうどでなければ動かないといったことはなく、ある程度の許容をもった組み合わせにおいて、最適化に向けてチューニングをするイメージかもしれません。つまり、同じ仕様の電源を3人の設計者が設計すると、例えばフライバックといったような基本構成は同じになるかもしれませんが、細かいところは三者三様です。これがアナログ回路、電源回路の設計の面白いところとも言えるでしょう。

以下に、本編で説明してきた項目と、特に「2.設計手順」からは項目ごとに記したキーポイントをまとめました。各プロセスにおいて押さえるべき内容になっていますので、今一度確認いただければと思います。

<AC/DC PWM方式フライバックコンバータ設計手法>

  1. 絶縁型フライバックコンバータの基本
  2. 設計手順

    キーポイント

    ・電源の場合は設計開始時点で仕様が完全に決まっていないことが多々あるが、可能な限り仕様を固めてから設計に取りかかる。

    ・現実的な電源設計においては、電源ICが担う部分が大きく、使うICによって回路や部品が決まる。

    ・量産に向けての判断では、要求仕様に対して適合、不適合だけではなく、トレードオフによる調整も必要。

  3. 電源仕様の決定

    キーポイント

    ・設計開始に必要な情報を可能な限り集めて、変更がある前提で許容幅と柔軟性をもって設計に入る。

  4. 設計に使うICの選択

    キーポイント

    ・昨今の電源設計においては、使う電源ICによって大方の回路や部品が決まってくるので、回路例などを参考に全体像をイメージ可能。

  5. 絶縁型フライバックコンバータ回路設計
    • トランス設計(数値算出)

      キーポイント

      ・基本的に設計する回路に適合するトランスの設計は必要になる。

      ・トランス設計を面倒がるエンジニアが多いが、ICメーカーやトランスメーカのサポートを利用できる。

    • トランス設計(構造設計)-その1
    • トランス設計(構造設計)-その2

      キーポイント

      ・数値算出に続き、具体的なトランス構造の設計に進む。

      ・数値算出に加え、おおよその構造設計ができれば、トランスメーカーなどの協力を得て最終化を促進することが可能。

    • 主要部品の選定-MOSFET関連 その1

      キーポイント

      ・スイッチングトランジスタ(MOSFET)は、主にドレイン-ソース間耐圧、ピーク電流、オン抵抗による損失、パッケージの許容損失を考慮して選定する。

      ・机上の計算だけでの厳密な選定は難しいので、経験則や実測が必要になる。

    • 主要部品の選定-MOSFET関連 その2

      キーポイント

      ・スイッチングトランジスタ(MOSFET)の動作を制御するための回路は電源ICの仕様に基づく。

      ・電源ICのデータシートには、回路、定数の決め方などが記されているので、それに従う。

    • 主要部品の選定-CINとスナバ

      キーポイント

      ・入力コンデンサCINは、入力電源の瞬断やスイッチングで引き込まれる入力電流を補うために重要。

      ・スナバ回路は、入力に発生するサージからスイッチングトランジスタを保護するために基本的に必要。

    • 主要部品の選定-出力整流器とCout

      キーポイント

      ・基本の回路動作は、ダイオード整流式DC/DCコンバータと同じ。

      ・出力整流ダイオードは、損失が小さいショットキダイオード、ファストリカバリーダイオードを使用すること。

      ・出力コンデンサにつかう電解コンデンサは、リップル電流にかかわる寿命について十分に吟味する。

    • 主要部品の選定-ICのVCC関連

      キーポイント

      ・電源ICには、電源IC内の制御回路用の低電圧DC電源(呼称例:VCCなど)が必要で、一般にはトランスの補助巻線(他の呼称:VCC巻線、三次巻線など)を利用する。

      ・電源の生成には、シンプルなダイオード整流が利用されることが多い。

      ・電圧はICの仕様に従い、特にAC/DCの場合は高電圧からの変換になるので、定格を超えることがないように留意する。

    • 主要部品の選定-ICの設定、その他

      キーポイント

      ・電源ICを使った設計では基本部品(ダイオードブリッジ、トランスなど)の他に、電源ICの機能設定などのために必要になる部品がある。

      ・電源ICのための部品の定数などは、データシート、アプリケーションノート、設計マニュアルなどの説明に従う。

      ・これらは保護回路の差動レベルや制限値などの設定用であることが多く、部品としては主に抵抗やコンデンサ。

    • EMI対策および出力ノイズ対策

      キーポイント

      ・スイッチング電源は潜在的にEMI源であり、伝導ノイズおよび放射ノイズの両方について対策をとる必要がある。

      ・EMCの観点からは、主にエミッション(ノイズ放出)の対策となる。

      ・対策の基本はノイズフィルタの設置となるが、基板レイアウトや基本部品にも関係する。

  6. 基板レイアウト例

    キーポイント

    ・スイッチング電源設計では基板レイアウトが電源性能やEMCに大きく影響する。

    ・基本的に大電流が流れるラインは太く短く、ループは小さくする。

    ・制御信号ラインは、ノイズの多いラインと別に引いて、トランスの直下にも引かない。


PWM方式フライバックコンバータ設計手法