絶縁型フライバックコンバータ回路設計:主要部品の選定-出力整流器とCout

2015.01.09

この記事のポイント

・基本の回路動作は、ダイオード整流式DC-DCコンバータと同じ。

・出力整流ダイオードは、損失が小さいショットキダイオード、ファストリカバリーダイオードを使用すること。

・出力コンデンサにつかう電解コンデンサは、リップル電流にかかわる寿命について十分に吟味する。

この項では、出力となるトランスT1の二次側に配置する、整流用ダイオードD6 と出力コンデンサ(Cout)C7およびC8について説明します。

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最初に、この部分の動作を簡単に説明しておきます。トランスT1の二次側には、一次側のMOSFETのスイッチング(オン/オフ)により生成されたエネルギーが絶縁バリアを介して伝達されます。これはオン/オフを繰り返すAC電圧なので、必要とされるDC電圧に変換するために、ここでは1個のダイオードD6によるダイオード整流を行いDC化します。整流された電圧にはリップルが存在するので、リップルを平滑しリップルが小さいDC電圧にするために、出力コンデンサC7、C8を用います。

全体の流れとしては、「絶縁型フライバックコンバータの基本:スイッチングAC-DC変換」の項で説明した通り、AC電源からの入力電圧はダイオードブリッジにより整流されいったんDC電圧になります。このDC電圧は電源ICにより制御されるMOSFETのスイッチングにより必要な電力分だけ切り分け(チョッピング)られて再AC化され、この出力段の整流および平滑回路によって所望のDC、この設計では12VDCに再変換されます。全体回路については、「絶縁型フライバックコンバータ回路設計」の項を参照願います。

出力整流ダイオード D6

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上述の通り、D6 はトランスT1の二次側に発生するAC電圧を整流しDC出力にするためのものです。回路図が示す通り、これはダイオード整流(非同期)方式のDC-DCコンバータと同じです。違いは、一次側のDC電圧が数百ボルトという高電圧である点です。

出力整流ダイオードには、損失を低減するために高速ダイオード(ショットキダイオード、ファストリカバリーダイオード)を使用します。ここに通常のダイオードを使うと、所望の電源性能が得られなかったり、最悪の場合は発熱のために破壊する恐れがあります。考え方は、ダイオード整流DC-DCコンバータのダイオードの選び方と同じです。

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マージンを考慮して、87V÷0.7=124V ⇒ 200V品を選定

ダイオードの損失(概算値)は: Pd=VF×Iout=1V×3A=3W

一般的には、電圧マージンは70%以下、電流は50%以下で使用することを推奨します。提示した回路では、ロームのファストリカバリーダイオード RF1001T2D(200V 10A、TO-220Fパッケージ)を使用しています。

最終的には、回路に組み込んだ状態で温度上昇の確認を行い、必要に応じて部品の再検討、ヒートシンクによる放熱を検討することになります。

出力コンデンサ(Cout) C7 、C8

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出力コンデンサは、整流電圧のリップルの平滑化とともに、負荷電流の過渡的な増加時に安定化維持の役目もします。

一次側のMOSFETがオンの時、ダイオードD6には電流が流れず(オフ)、出力コンデンサが負荷に電流を供給します。MOSFETがオフの時は、ダイオードD6は導通し(オン)、出力コンデンサC7およびC8を充電するとともに負荷にも電流を供給します。

出力コンデンサは、給電されるデバイスが許容可能なピークツーピークリップル電圧(ΔVpp)と、リップル電流(Is(rms))をもとに決定します。

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一般的なスイッチング電源用電解コンデンサ(低インピーダンス品)のインピーダンスは100kHzで規定されているので、

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つまり、200mVppのリップル電圧を許容値とした場合には、インピーダンスが0.01Ω以下のコンデンサを選択する必要があります。

次にリップル電流を求め、これをもとにコンデンサのリップル電流定格を検討します。

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耐圧は、出力電圧の2倍程度を目安にします。 Vout×2=12V×2=24V ⇒ 25V以上とする

提示した回路では、スイッチング電源用の低インピーダンスタイプ 35V 1000μFのコンデンサを2個並列で使用します。

出力コンデンサには、一般的に電解コンデンサが使用されます。電解コンデンサは寿命がある部品で、リップル電流を多く流すと寿命が短くなります。寿命に関しては、コンデンサメーカーから算出方法や規定が提示されていますので、使用するコンデンサメーカーに確認してください。

出力リップル電圧およびリップル電流についても、実際の回路での確認が必要です。

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