SiCパワーデバイス|FAQ
SiCパワーデバイスのよくあるご質問
2020.01.01
SiCパワーデバイスのFAQ一覧
SiC MOSFET
シミュレーション
- Si MOSFETのSPICEモデルが正常動作する回路にSiC MOSFETのモデルを適用すると、「Time Step Too Small」というエラーが出て停止する。
- 回路シミュレーションの「Time Step Too Small」というエラーの対処に、各ノードに抵抗を接続しても解決しない。
- SiC MOSFETのSPICEモデルで定義されているゲート抵抗の値がデータシートと異なるが、どちらが正しいか?
- SiCデバイスのSPICEモデルを読み込むと構文エラーになる。
一般・その他
仕様・規格
- 第2世代プレーナ型SiC MOSFET製品のゲート駆動電圧が、推奨値(オン時+22V~+18V、オフ時-3V~-6V)から外れるとどうなるか?
- SiC SBD内蔵SiC MOSFETデータシートに記載されているダイオードの仕様は、ボディダイオードとSiC SBDのどちらのものか?
- SiC MOSFETのブレークダウン電圧仕様の温度条件は?
- SiC MOSFETのアバランシェ耐量は?
- SiC MOSFETやSiC SBDのパッケージを放熱板に取り付ける場合の、推奨ネジや規定トルクは?
- SiC MOSFETやSiC SBDのパッケージ裏面の金属は、他の端子と絶縁されているか?
設計・動作
- SiC MOSFET並列接続時の注意点は?
- SiC MOSFET直列接続時の注意点は?
- SiC MOSFET並列接続時の最適な外付けゲート抵抗値は?
- SiC MOSFET駆動時に、ゲート信号にオーバーシュートやアンダーシュートがある理由は?
- SiC MOSFET使用時、ゲート信号のオーバーシュートやアンダーシュートを抑える方法は?
- SiC MOSFET、SiCモジュール製品のゲート駆動電圧に、マイナスバイアスは必要か?
- SiC MOSFET、SiCモジュール製品におけるゲートド駆動信号の許容インダクタンスは?
- SiC MOSFETの内部ゲート抵抗がSi MOSFETと比べて大きいのは何故か?
- SiC MOSFETのボディダイオードのリカバリ電流が、Si MOSFETに比べかなり小さい理由は?
- SiC MOSFETのボディダイオードのリカバリ時間が、Si MOSFETに比べかなり短い理由は?
- SiC MOSFETのボディダイオードの順方向電圧が高い理由は?
- SiC MOSFETのプレーナー型とトレンチ型、それぞれのメリットとデメリットは?
- スイッチング損失の計算式を知りたい。
シミュレーション
- Si MOSFETのSPICEモデルが正常動作する回路にSiC MOSFETのモデルを適用すると、「Time Step Too Small」というエラーが出て停止する。
- 「Time Step Too Small」は計算が収束しないために発生します。収束を良くするには電気的に浮いているノードを1MΩ程度で接地する手法が知られています。DS間やDG間に外挿してみてください。
- 回路シミュレーションの「Time Step Too Small」というエラーの対処に、各ノードに抵抗を接続しても解決しない。
- シミュレーション条件のうち、最大時間刻みが設定されていない可能性があります。
SiCデバイスのモデルは内部で指数関数を多用しているため、時間刻みが粗いと収束が悪くなることがあります。 - SiC MOSFETのSPICEモデルで定義されているゲート抵抗の値がデータシートと異なるが、どちらが正しいか?
- ロームのSiCデバイスのSPICEモデルは、実際のデバイスの特性を数種の関数でフィッティングし、
これを再現するように電圧制御電流源等で構成しています。シミュレータに組み込まれているMOSFETの雛形モデルは使用していません。
よって、定義されているゲート抵抗は実際の値と異なります。データシートの方が実際の値に近いと考えてください。 - SiCデバイスのSPICEモデルを読み込むと構文エラーになる。
- シミュレータによっては双曲線関数あるいはその逆関数を解釈しない場合があります。
モデル内部に「.FUNC」の羅列があるので、その前にTANHおよびASINHを再定義する文を追加すると直る可能性があります。
ただし、ASINHを対数関数で置き換える場合は自然対数を常用対数と混同しないようご注意ください。
自然対数の記法はシミュレータの説明書をご参照ください。
一般・その他
- SiC MOSFETやSiC SBDの樹脂パッケージ部分を金属バネで押さえた時、絶縁抵抗値は低下するか?
- 露出している金属部分(パッケージ裏面放熱部、ならびに切り込みの金属露出部)はドレインと同電位となります。
その為、パッケージ表面(標印が印字された面)に金属板を当てた場合、沿面距離が不足する可能性はあります。
使用環境に沿った沿面距離の規定を確認していただくようお願いします。
仕様・規格
- 第2世代プレーナ型SiC MOSFET製品のゲート駆動電圧が、推奨値(オン時+22V~+18V、オフ時-3V~-6V)から外れるとどうなるか?
- オン時の駆動ゲート電圧が15Vを下回ると充分にオン出来なくなり、14V以下になるとオン抵抗の温度特性が正から負となります。
そうなると高温になればオン抵抗が下がり、 熱暴走の危険性がありますので、必ず15V以上が印加されるように配慮して下さい。
TZDBは40V以上ありますのでゲート破壊の心配はありませんが、DCで定格(-6V/+22V)を超える電圧を与え続けると、ゲート酸化膜界面に存在するトラップの影響でしきい値が徐々に変動いたします。
瞬時のサージ電圧(300nsec以内)であれば閾値電圧変動の影響が小さいため、-10V~+26Vの範囲であれば許容可能です。 - SiC SBD内蔵SiC MOSFETデータシートに記載されているダイオードの仕様は、ボディダイオードとSiC SBDのどちらのものか?
- 内部で接続されているため、外部から特性を切り分けることはできません。
ただし、SiC SBDのVFが小さいため、通常の使用範囲では順方向電流はSiC SBDのみに流れますので、If-Vf特性や逆回復特性ははほぼSiC SBDの特性となります。 - SiC MOSFETのブレークダウン電圧仕様の温度条件は?
- 常温(Ta=25℃)です。
高温ではリーク電流とブレークダウン電圧がわずかに増加します。 - SiC MOSFETのアバランシェ耐量は?
- 全数測定を実施していませんのでアバランシェ耐量に関しては現状保証させて頂いておりませんが、1200V 80mΩ品で1.2J程度の値です。
- SiC MOSFETやSiC SBDのパッケージを放熱板に取り付ける場合の、推奨ネジや規定トルクは?
- ディスクリートパッケージのネジについて特に推奨はしておりませんが、皿ネジは異常な応力がかかるので使用しないでください。
締め付けトルクは 49Nm ~ 68.6Nm です。
タッピングネジを使用する場合は上限トルクを超えないようにご注意ください。 - SiC MOSFETやSiC SBDのパッケージ裏面の金属は、他の端子と絶縁されているか?
- 裏面の金属露出部は、MOSFETはドレイン、SBDはカソードとつながっています。対地絶縁など適宜ご配慮願います。
設計・動作
- SiC MOSFET並列接続時の注意点は?
- ・電力配線等を均等にしなければ、電流やチップ温度がアンバランスになります。
・スイッチングのタイミングを合わせないと過電流破壊します。
・Vgs(on)が十分高くない場合、Ronの温度特性が負となり、特定のチップに電流が集中し熱暴走破壊する危険があります。 - SiC MOSFET直列接続時の注意点は?
- ・上側デバイスの対地絶縁がデバイスの絶縁耐電圧しか保証できません。
・直列数のゲート電圧用フローティング電源が必要です。
・直列接続時には、オン抵抗の温度係数は正となるため、熱暴走防止のため、製品ばらつきを考慮して充分な電流ディレーティングを考慮下さい。
・直列により高耐圧のシングルスイッチとして使用する場合には並列に高抵抗を挿入するなどして適切に分圧できるような対策を推奨します。
・スイッチングのタイミングを合わせないと耐圧破壊します。 - SiC MOSFET並列接続時の最適な外付けゲート抵抗値は?
- ゲート信号配線長が均等ならば1~3Ω程度です。抵抗はそれぞれのMOSFETに接続し、ゲート信号のタイミングを揃えてください。
また、配線長が著しく異なる場合も、大きめ目(10Ω程度)の抵抗値を挿入し、スイッチングのタイミングを揃えることができます。 - SiC MOSFET駆動時に、ゲート信号にオーバーシュートやアンダーシュートがある理由は?
- 基板の寄生容量や寄生インダクタンス等の影響で、LC共振が考えられます。以下の項目を確認してください。
①ゲートドライブ回路に付いている外付けゲート抵抗
②ゲートドライブ回路の出力容量
③ゲートドライブ回路の配線の寄生インダクタンス
④SiC MOSFETのゲート容量
⑤SiC MOSFETの内部ゲート抵抗
などいずれの抵抗も小さいとオーバシュート・アンダシュートのピーク値が大きく、かつリンギングの減衰に時間がかかります。
また、容量が大きいとピーク値は小さくなりますが、スイッチングスピードが遅くなります。
インダクタンスが大きいとピーク値が大きくなります。 - SiC MOSFET使用時、ゲート信号のオーバーシュートやアンダーシュートを抑える方法は?
- 基板の寄生容量や寄生インダクタンス等の影響で、LC共振が考えられますので、以下の項目を確認してください。
①ゲートドライブ回路に付いている外付けゲート抵抗を大きくする。
②ゲートドライブ回路の出力容量を小さくする。
③ゲートドライブ回路の配線の寄生インダクタンスを小さくする。
抵抗が小さいとオーバシュート・アンダシュートのピーク値が大きく、かつリンギングの減衰に時間がかかります。容量が大きいとスイッチングスピードが遅くなります。インダクタンスは出来るだけ小さくして下さい。 - SiC MOSFET、SiCモジュール製品のゲート駆動電圧に、マイナスバイアスは必要か?
- FET OFF状態で、ドレイン電位が上昇する際、ゲート-ドレイン間容量のACカップリング現象により、ゲート電位が持ち上がる可能性があります。代表的なアプリケーションとしては、直列接続したブリッジ駆動です。
誤オンによる短絡破壊を防ぐために、マイナスバイアスをお使いいただくことを推奨します。
ゲート・ソース間に容量を追加いただくことでもゲート電位の持ち上がりを抑えることができます。
また、ミラークランプMOSFETをゲート-ソース間に接続し、確実に短絡するすることで、ゲート電位の持ち上がりを防止できます。
なお、ミラークランプMOSFETの駆動にはノイズによる誤動作にご注意ください。 - SiC MOSFET、SiCモジュール製品におけるゲートド駆動信号の許容インダクタンスは?
- 具体的な指針はご提供しておりません。
デバイスのゲート端子からゲートドライブ回路のパスコン端子までの配線長が最も影響しています。デバイスのソース端子から基板上のグランドパターンまでの配線インダクタンスも考慮する必要があります。 - SiC MOSFETの内部ゲート抵抗がSi MOSFETと比べて大きいのは何故か?
- Rgはチップサイズに反比例しますのでチップサイズの小さいSiCではRgが大きくなります。
またゲート電極の材料としてシート抵抗の高いものを使用しています。
ゲートドライブ回路の外付けゲート抵抗は0Ωでも問題ありませんが、ドライバーの電流容量やサージ等を考慮してください。 - SiC MOSFETのボディダイオードのリカバリ電流が、Si MOSFETに比べかなり小さい理由は?
- SiC MOSFETのボディダイオードはpn接合でありがなら、少数キャリア寿命が短いために少数キャリアの蓄積効果がほとんどみられないために、SBDと同等の超高速リカバリ性能(数十ns)を示します。
- SiC MOSFETのボディダイオードのリカバリ時間が、Si MOSFETに比べかなり短い理由は?
- SiC MOSFETのボディダイオードはpn接合でありがなら、少数キャリア寿命が短く蓄積効果がほとんどないため、SBDと同等の超高速リカバリ性能(数十ns)を示し、リカバリ時間はSBDと同じく順方向注入電流に依存せず一定です(dI/dtが一定の場合)。
- SiC MOSFETのボディダイオードの順方向電圧が高い理由は?
- SiCのバンドギャップがSiの約3倍であるため、pnダイオードの立ち上がり電圧は3V前後と大きく、順方向降下電圧が比較的高くなります。
少数キャリア寿命が短く蓄積効果がほとんどないため、ダイオードのオン抵抗が下がらないのも要因と考えられます。
ただし、ブリッジ回路などでは転流中にゲートオン信号が入ることによって逆導通できますので実質的な定常損失はあまり問題となりません。 - SiC MOSFETのプレーナー型とトレンチ型、それぞれのメリットとデメリットは?
- トレンチ型のメリットとしては、
①オン抵抗が小さい
②寄生容量が小さい
③スイッチング性能が良い
などが挙げられます。デメリットとしては、オン抵抗が小さいため短絡耐量が短いことです。 - スイッチング損失の計算式を知りたい。
- ドレーン-ソース電圧とドレイン電流の下限値を基準に、両者の積を下記期間で積分しています。
ターンオン時:(開始)ドレイン電流の上昇開始点(終了)ドレイン-ソース電圧の降下終了点
ターンオフ時:(開始)ドレイン-ソース電圧の上昇開始点(終了)ドレイン電流の降下終了点
SiC ショットキーバリアダイオード(SiC SBD)
仕様・規格
- SiC SBDのデータシートには逆回復損失Errの項目がないが、どのように見積もればよいか?
- SBDはキャリア蓄積がないため逆回復という現象はありません。
しかし寄生容量は持っているので、これの充放電という形でスイッチング損失が発生します。
例えばSCS240AE2Cを250kHz400Vで動作させる場合は、
fQV = 250kHz x (31nC x 2) x 400V = 6.2W
と概算できます。電流は無関係です。 - SiC SBDのデータシートには逆回復時間の電流依存性グラフがないが、どのように見積もればよいか?
- 表にある「スイッチング時間(tc)」が逆回復時間になります。SBDの場合、逆回復時間は電流や温度依存性があまりないので、データシートにグラフを載せていません。
フルSiCモジュール
シミュレーション
- SiCモジュール用のSpiceモデルで設定しているゲート、ドレイン、ソースの寄生リアクタンスの値は?
- 実際の特性に合わせた値となっており、構造的な要素から導かれたものではありません。参考値としてお取り扱い下さい。
ゲート:なし
ソース::L=1.75nHとR=1Ωの並列
ドレイン:なし
一般・その他
- SiCモジュールの保管時に、端子間を短絡処理する必要はあるか?
- 短絡処理を推奨します。
ただし、導電防止または帯電防止を施した状態であれば、その必要はありません。
仕様・規格
- SiCモジュールにゲート駆動基板を固定する場合の推奨ネジや規定トルクは?
- 基板の取り付けには、対樹脂を謳っているBタイト、あるいはPタイトの呼び径2.6、ピッチ0.9のタップビスが推奨です。
締め付けトルクは60 ~ 80cNmを目安にしてください。
ゲート端子等とはんだ付けする前に締め付けてください。 - SiCモジュールの出力端子3、4は短絡接続した方がよいか?
外部で短絡しなくても、どちらからの端子から定格電流を出力できるか? - 端子3,4はどちらも単独で定格電流を流すことができます。
しかし上アームと下アームでインダクタンスが完全に対称ではないので、バランスを考えると両端子を接続して配線した方が良い場合があります。配線抵抗も下がります。 - SiCモジュール裏面の金属は、他の端子と絶縁されているか?
- 裏面金属および取り付け孔のカラーと、他の端子の間は絶縁されています。データシートに絶縁耐圧を掲載しています。
設計・動作
- SiCモジュールの評価用ツールはあるか?
- 下記のツールをご提供できます。
・ゲートドライブ回路リファレンス基板(BW9499H/BP59A8H)
・スナバコンデンサモジュール(EVSM1D72J2-145MH16/26)
・損失シミュレータ
全体
シミュレーション
一般・その他
仕様・規格
設計・動作
シミュレーション
- SiC製品におけるSPICEモデルに、配線インダクタンスや寄生容量は含まれているか?
- 特性測定結果に基づいてモデルを生成していますので、基本的に含んでおります。
等価的に定義されていたとしても、実際の寄生成分を反映したものではありません。 - SiC製品用のSPICEモデルの動作環境は?
- 動作確認している環境は、「Pspice」系のソフトウエアで、
①SIMetrix
②Ltspice
③OrCAD
等です。
「HSpice」系では双曲線関数に対応していないため、動作しないことがあります。 - SiC製品用のSPICEモデルのグレードは?
- 「Behaviour model」のみです。
シリコン系デバイスの動作原理に基づく関数群はSiCデバイスでは使用できません。
一般・その他
- 定格電圧が650V、1200V、1700V以外のSiC製品(300V、900Vなど)をリリースする計画はあるか?
- 現在のところありません。
仕様・規格
- SiC製品にて、ディスクリート品とモジュール品でドレイン-ソース定格電流が違う理由は?
- 使用温度条件が違うためです。
モジュール:ジャンクション温度(Tj)150℃,ケース温度(Tc)60℃
MOSFET:ジャンクション温度(Tj)175℃,ケース温度(Tc)25℃ - SiCは高温動作可能といわれているが、ロームのSiC製品はTjが175℃までとなっている理由は?
- パッケージに使用する封止樹脂材料、およびはんだなどの金属接合材料自身の耐熱により制限されています。
またSiCデバイスとの接合信頼性の問題により温度サイクル試験やパワーサイクル試験の高温側温度を上昇できません。
設計・動作
- SiC MOSFET、モジュール製品のゲートドライブ回路に関して、推奨する回路構成や回路定数はあるか?
- ゲートドライブ回路のリファレンス基板があります。(SiCモジュール製品への直接取り付けを想定したドライブボードとなります)
SiC MOSFETを並列接続する場合は、外付けゲート抵抗をそれぞれのMOSFETに接続し、ゲート信号のバランスを取ってください。
【資料ダウンロード】SiCパワーデバイスの基礎
SiCの物性やメリット、SiCショットキーバリアダイオードとSiC MOSFETのSiデバイスとの比較を交え特徴や使い方の違いなどを解説しており、さまざまなメリットを持つフルSiCモジュールの解説も含まれています。