坂本 朱 Akemi Sakamoto (アルト/スズキ)

<公演後コメント>
人が誕生したばかりの時、その赤子は「愛」を知っているのだと信じています。 愛を知る存在、としてこの地球に生まれてくるのです。とかく、恋をして愛を知ってゆく、のが人生での学びと言われますが、無垢の存在で生まれた赤子が少しずつ、大人に囲まれ、社会に触れるうちに何か大事なものを忘れてゆく道を歩かざるを得ないような、そんな人としての悲しい運命を思うのです。
この度、ローム ミュージック フェスティバル 2018に参加させていただけましたこと、心深く関係者の皆様方へ、そして舞台でご一緒させていただきました音楽家の仲間たちへ感謝を申し上げます。真に愛に溢れた、美しい、それは美しい現場でございました。 至るところに誠意を尽くしてくださった結果の、行き届いたフォローを感じ入ることばかりでございました。そして、現場の舞台裏は静寂に包まれた、凛とした風情でございました。このような現場は拝見したことはないくらいでございます。
最近の、感受性の成長に問題があるかのように、人々が人らしさを失いかけているような、悲観的な想いを抱くことも多くなりました。これは世界中で起こっています。これはいつか、芸術的創造、芸術活動にも闇をもたらせかねない危機とも思います。しかし、謙虚に懸命に、利他愛に生きようとする人々がいる限り、その闇を追いやる力が存在することになります。
その「力」、それがローム ミュージック ファンデーション様の存在でもあります。 率いてくださるその「力」のおかげで、1002様の制作も見事でございました。素晴らしい皆様に支えられて、とても幸せでございました。歌い、演じることへの新たなる確信と、勇気を与えてくださいました。今も、感極まる思いでございます。
そして最後になりますが、開場中に出会いました若く元気みなぎる出演者の方々への、今後へのますますのご活躍を祈ってやみません。この愛溢れるご縁に触れさせていただいておりますことに、深く深くお礼を申し上げます。
誠にありがとうございました。

<出演にあたってのコメント>
【愛することを知る前に愛されることに慣れてしまった】(三枝成彰作曲オペラ:「狂おしき真夏の一日」台本:林真理子 )、私の心に響いたフレーズです。【おかげさま】の恩恵を自分の生き方にどう受けいれ、そして自分の姿に反映してゆくか、大きな問いが隠されているかのようです。在研生時の私が好奇心いっぱいに、楽しく勉強して過ごしていた、かけがえのない時間を思い出しております。溢れるほどの教えと、味合わせていただいた経験により、今、ここで演奏いたしますことはまことに大きな歓びでいっぱいでございます。

©Akira Muto