留学2年目のスタート(吉澤淳さん)
吉澤 淳さん/Ms.Makoto Yoshizawa
(専攻楽器ソプラノ/soprano)
[ 2018.05.16 ]
学校名:アントンブルックナー音楽大学大学院
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の吉澤淳です。
アントンブルックナー音楽大学大学院に在学してからあっという間に1年が過ぎ、昨年秋より2年目に突入しました。
この1月で3ゼメスター目を終えることが出来ました。
<早朝の学校からみた景色>
大学は旧市街からBergbahnと呼ばれる登山列車に乗り、少し中心街より高い位置にあり、ドナウ川や旧市街を一望することが出来ます。
秋に練習のために朝早く学校へ向かうと、なんと雲海が現れていました!
雲の隙間から教会の屋根の先だけが顔を出していて、まるで学校が雲の上にあるようなとても美しい景色を見ることが出来ました!
この秋よりアンドレアス・レベダ教授に代わり、ソプラノのカテリーナ・ベラノヴァ教授に師事し、昨年以上に自分と声と向き合うことができた半年となりました。
11月にはドイツのデュッセルドルフで行われた第1回Anton Rubinstein国際声楽コンクールに参加をし、有難いことに第3位を頂くことができました。
入賞させて頂き素直に嬉しい気持ちと、これからの課題へ更に向き合わなければいけない思いが交差する結果となりました。
ですが、このコンクールに向けての準備や秋から始まった新しい先生の下でのレッスンを通して、自分の中でのもがいていた課題がゆっくりではありますが、でも確実に良い方向へ向かい始めているという実感を得ることが出来ました。
この経験を糧に、さらに自分と音楽と向き合う時間を充実させ、次に繋げていきたいと思います。
<コンクールの表彰式にて>
また12月には昨年訪れたシュトルーデンガウにある教会にて今年も演奏会に参加させて頂きました。
今年はモーツァルト作曲のモテット「踊れ喜べ、幸いなる魂よ」のソプラノソリストを務めさせて頂きました。
教会で歌うのは、コンサートホールとはまた異なる響きの中での演奏になります。(さらに12月ということもあり、教会の中はとても冷え込みます…)
ですが、余計な邪念が飛んでいくかのような、ただ音楽とだけ向き合う気持ちにさせてくれる厳かな空間、そのような空間の中で、空間や響きとそこでしか出来ない音を作ることはとても楽しい時間でした。
最後の一音が教会の中でゆっくりと響き、音が消えるころの一瞬の静寂の後に温かい拍手を頂き、残った音が残響してから一瞬の静寂までの数秒が、時が止まっているかのような、自分も教会や音楽の中を漂っているかのような時間でした。
また、演奏会の後半にはアンサンブルとして参加し、クリスマスの歌曲をアカペラで演奏致しました。
ドイツやオーストリアでクリスマスの定番とされている歌曲ばかりで、オーケストラと一緒に演奏するのとはまた異なり、人の声だけが教会に響く音や感覚は、自分の持つ音の幅を広げてくれる良い経験となりました。
<教会での演奏会の様子>
後日、地元紙に演奏会、そして私の演奏についても取り上げていただき、とても嬉しい評価を頂くことが出来ました。
クリスマス歌曲の中には、オーストリアの方言で歌われるものもありました。
リンツはOberösterreich州にあり、学校の同級生もOberösterreich出身の子も多くいます。
東に位置するウィーンも標準語とされるドイツ語とは異なることもありますが、Oberösterreichの訛りはさらに強く、母音が変わってしまったり、語尾や子音が省略されたりと、昨年度の1年は言葉を理解するがとても大変でした。
この方言の歌曲の勉強を機に方言についても興味も持ち、知っていくうちに少しずつ言葉にも慣れ、最近では友人と音楽の話や相談をし合ったり、一方でたわいもない話をしたりと、オーストリア人の友人らと過ごす時間がぐんと増えました。
こうした何気ない時間を通して、相手の考えや習慣から自分にはない発見につながることもあり、留学生活でのかけがえのない時間のひとつです。
4月には大学のオペラプロジェクトに参加させていただくことになり、リンツ州立劇場にてヘンデル作曲のオペラ「アルチーナ」にモルガーナ役で出演させて頂くことになりました。
また今年生誕100年を迎えるバーンスタインのフェスティバルがリンツで6月に開催予定で、こちらにも参加させて頂くことになり、新しい挑戦も増える年となりそうです。
最後になりましたが、ロームミュージックファンデーション様にいつも多大なるご支援を頂き、本当にありがとうございます。
今年も先へ繋がるよう実りある一年にしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。