奨学生レポート RMFレポート インタビュー

IRCAMでの作品制作を中心に(北爪裕道さん)

北爪 裕道さん/Mr. Hiromichi Kitazume
(専攻楽器作曲/composision)

[ 2017.10.23 ]

学校名:パリ国立高等音楽院、IRCAM(フランス国立音響音楽研究所)

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の北爪裕道です。

昨年9月から一年間在籍したIRCAM(イルカム、フランス国立音響音楽研究所)の作曲課程も6月末をもって無事修了しました。

期間末の6月20日には、パリで行われる音楽祭「Mani-Feste」の中で、この課程で作曲した新作、クラシックギターとライブエレクトロニクスのための「Stipple & Shadow」が初演されました。

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ライブエレクトロニクスというのは、器楽と電子音響の混成による演奏形態の一つで、器楽の生演奏と並行して、その音をマイクで拾いリアルタイムにコンピューターでさまざまに加工、コントロールしてスピーカーから流します。

これによって、楽器の生演奏の音響とそれに呼応するスピーカーからの電子音響との間にある種の対話性や生きた関連性が生まれ、それが醍醐味の一つです。

今回在籍したIRCAMの作曲課程は、このライブエレクトロニクスに関連する様々な技術の習得と実践を主な目的の一つとしているといえます。

作曲家は楽譜のほかに、そのあらゆる処理を行うのためのプログラムや音素材などを前もって作成し、演奏中はコンピューターの前でそれらが正しく作動するよう管理します。

 

今回の作曲作業の過程では、まずその初期段階としてある程度の草稿やアイデアを準備し、IRCAM内で演奏家とともに実演して発表するという会が3月末に設けられました。

当日集まった講師たちからの講評や音楽家・技術者たちとの議論はその後の曲作りの様々な可能性を模索するにあたってとても有意義な機会となりました。

 

1<IRCAMにて新作の草稿発表・講評会>

 

そしてその後の約2ヶ月間、さらにギターの様々な奏法の研究や技術的な実験、演奏家や講師との打ち合わせを重ねながら作曲を進め、まず楽譜を完成、さらに演奏プログラムを作成し、リハーサルでその細部の修正・調整作業を経て、コンサートを迎えました。

 

2<コンサートのリハーサル風景>

 

コンサート会場では、客席を360度取り囲むように大きなスピーカーが多数配置され、それを通して様々な音が会場内をダイナミックに動き回ったり反射したりする音響を作り出すことができます。コンサートのライブでしか味わえないその迫力は圧巻です。

 

<コンサート本番での演奏動画>

 

この一年間にIRCAMで見聞した様々な技術や科学、そして世界各地で行われている創造的試み…それらひとつひとつがいわば今後進めるべき探求への入り口になっているように思えます。

その中から今後自分は何に興味を持ち、どう発展させるかということを、じっくりと楽しみながら考え始めています。
一方で、1月13日にパリ音楽院で行われた電子音響音楽のコンサートに参加したことも大変興味深く貴重な経験となりました。

椅子を取り払った会場中に30個以上のさまざまなタイプのスピーカー、さらに中央に自動演奏ピアノを配置し、それらを離れた位置から遠隔でコントロールしながら、10曲余りの電子音響作品を次々につなげて上演します。

各曲は、作曲科の学生たちがそれぞれにテクノやポップ・ミュージックに影響を受けて制作したもので、それらの並べ方・組み合せ方や照明、演出等、コンサートの全体像を議論しながら計画しました。

今後のコンサートの在り方やその可能性を考える上でも、刺激的な機会となりました。

 

3<パリ音楽院での電子音響コンサートの様子:リハーサル中(左)・開演直前(中)・演奏中(右)>

今年9月から始まる新年度、パリ音楽院では修了作品制作、論文執筆、そしてアンサンブル・アンテルコンタンポランという演奏団体のための作品を作曲する予定です。

引き続きロームミュージックファンデーション様のご支援をいただけることに心から感謝しつつ、精一杯励みたいと思います。

 

 


人間と機械との対話、そこから生まれる音楽は興味深いですね。 日本においてもこのような曲を聴けるチャンスが増えるとよいですね!