オペラと歌曲と。(深瀬廉さん)
深瀬 廉さん/Mr.Ren Fukase
(専攻楽器バリトン/baritone)
[ 2017.04.11 ]
学校名:ベルリン芸術大学大学院
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の深瀬廉です。
2016年10月より、ベルリン芸術大学大学院オペラ科にて研修致しております。このベルリンという街は、ドイツで最も刺激的な街だと思います。
昔からある街並みと今も残る東西ドイツの面影、そして近代的なアートの共生する様を生活の中で体感できる街はなかなか他にはないと思います。
今回は、そんなベルリンの大学院で私がどのように研修しているかをお伝えします。
授業内容はとても贅沢です。
週2回行われる個人レッスンでは歌はもちろん、これからのキャリアや心のことなど、先生が多岐にわたって教えてくれます。
オペラの役のレパートリーを広げる授業では、多くの国の歌劇場で仕事をしてきたコレペティトゥアと音楽や役について話し合います。
舞台上で効果的なドイツ語の話し方を教えてくれる授業は外国人である私にとってとても重要で大変ですが、先生が丁寧に細かく見て下さいます。
オペラ科ならではの授業として、オペラ演出付き授業というものがあります。
実践的にオペラの場面を作り上げる授業なのですが、そこで重視されるのが演ずる人物がどの言葉の意味を伝えたいのか、どの言葉に反応して歌い始めるのかという点です。
最初は何もわからずに自分なりに感じるがまま演じていましたが、そのような幾つかの実践のための助言を得て、自分の演技が徐々に真実味を帯び自然体になってきたように感じています。
オペラ科の学生は歌曲の授業も受けることができます。
これは今まで歌曲を中心に研究してきた私にとって嬉しいことです。
今はシューベルトの有名な『水車小屋の娘』(大好きな曲集です!)を中心に取り組んでおり、この曲集を通して「さすらい」を代表とするこの国の伝統と思想を学ぶことが、私のドイツ歌曲研究の基盤に繋がってきています。
もちろん表現技術の上でも、一線で活躍した歌曲歌手の伴奏をしているピア二ストから語感や細かい表現法を学んでいます。
更に、オペラと同時に歌曲を学ぶことで思わぬ利を得ました。
それは、歌曲における人物の心の表現方法が変化したことです。
私は今まで言葉の中に心を込められるよう努力していました。
しかし、前述したようなオペラ科の授業を通して、言葉を発する前に表現を込めた方が歌に説得力が生まれることに気付かされ、またその点はオペラでも歌曲でも同じく大切なのだと感じました。
そのような学びの甲斐があってか、先日行われたクラス演奏会ではドイツの方々から賞賛を賜りました。
7月には大学主催のオペラの公演があります。その前にはコンクールやオーディションにも挑みます。
実りのある研修となるよう、これからも積極的に励んで参ります。また7月に報告致します。