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レポート(田原綾子さん)

田原 綾子/Ms. Ayako Tahara
(専攻楽器ヴィオラ/Viola)

[ 2016.05.9 ]

学校名:桐朋学園大学

ロームミュージックファンデーション奨学生の田原綾子です。
この秋も演奏する機会に恵まれ、素敵な出会いがたくさんあった季節でした。

武生国際音楽祭での演奏

<武生国際音楽祭での演奏>

桐朋学園大学では、週1回ずつ合計2回、岡田伸夫先生と藤原浜雄先生の個人レッスンを受けるというサイクルで生活しており、二人の素晴らしい先生から頻繁にレッスンを受けさせて頂けていることは、自身の技術の向上はもちろん、音楽に対する姿勢や表現することへの貪欲さを追求することにつながっています。
また、桐朋学園の特徴のひとつが室内楽にとても盛んということで、希望すれば学年に関係なく好きな編成でメンバーを組み、一年間かけて2人の先生に指導を頂けるシステムがあります。
私はこの一年、山崎伸子先生と磯村和英先生から、作曲家に沿った音楽作りや弦楽四重奏での生き生きとした表現にするための教えを頂いており、メンバーそれぞれ忙しい中でも上手く予定をやりくりして集まり、4人がひとつの楽器になるのを目指して頑張っています。
学生生活以外にも室内楽の合わせや本番、オーケストラのエキストラなどもあるため、かなりハードなスケジュールですが、周りの仲間達や家族、先生方に支えられながら、体力勝負で乗り越え、楽しく充実した毎日となっています。

 

エール弦楽四重奏団

<エール弦楽四重奏団>

 

9月初めは武生国際音楽祭に参加させて頂き、高校時代に結成したエール弦楽四重奏団でヤナーチェクやバルトークのクァルテット、そしてピアノの伊藤恵先生とシューマンのピアノ五重奏曲を共演させて頂きました。
初めて挑戦したヤナーチェクとバルトークはとても難しく、リハーサルの時間がいくらあってもなかなか思い通りにならず、不安なところも多かったのですが、舞台では高い集中力を持って演奏することができたのではないかと思います。
長い時間を一緒に過ごしてきたかけがえのない仲間がいること、そして彼らと共に音楽を奏でられることに心から嬉しく思えた本番でした。
武生の地元の方の暖かいお人柄にも沢山支えられて、他にもモーツァルトの室内楽や、ソロでもシューマンの作品を演奏することが出来、たくさんの思い入れが込められた素晴らしい経験をさせて頂きました。
次回の音楽祭にも参加させて頂く予定ですので、音楽的にも人間的にも一回りも二回りも大きくなった姿をお見せしに戻りたいなと思います。

 

10月には国際コンクール参加のために私にとって初めてのベルリンにも行ってきました。コンクールは悔いの残る演奏と結果で残念なものになってしまいましたが、他の参加者の方の演奏を聴き、審査員の先生方とお話したことで、この悔しさをバネにもっと成長していけるように努力したいと痛感する貴重な経験となりました。
また、空いている時間を使ってベルリンの街並みを散策し、フィルハーモニーホールでベルリンフィルを聴けたことも大切な宝物です。
街の雰囲気や音の厚みや迫力はテレビで見聞きするものとやはり違い、本場ヨーロッパの音楽を聴き、学ぶことへの憧れを再認識することが出来ました。

銀座CHANELネクサスホールにて

<銀座CHANELネクサスホールにて>

 

11月には銀座シャネルで開催された室内楽シリーズに出演しました。
ヴィオラの大山平一郎先生がアドバイスを下さりながら、一週間かけて密な室内楽に仕上げていくリハーサルは一瞬一瞬が学ぶことばかりで、リハーサル期間中では脳に入ってくる情報が多すぎてすっかり自信をなくし、へこんでしまうこともありました。
しかし、自分なりにそれを整理して消化し、心を込めて演奏できた本番が終わった時、大きな達成感と充実感で感極まり、思わず涙が出てしまうほどでした。
それほどの体験をさせて頂けたことは本当に幸せなことで、また、深い音楽表現をすることがどれだけ難しく、どんなに素晴らしいことかを実感することができた時間でもありました。ヴィオラにとってなくてはならない存在である室内楽に更に愛を持って、真摯に取り組んでいきたいと改めて思います。
来年春にあるシャネル室内楽シリーズ、ソロのリサイタルにも出演させて頂けることになっているので、より良い音楽作りをこれからも心がけていきたいです。

 

12月の初旬には、現代曲を勉強する機会もあり、三瀬和朗先生の弦楽トリオを初演させて頂きました。
楽譜だけを頼りに音楽を作っていくことはとても大変ではありますが、作曲者である先生と直接話し合いながらどうすれば楽譜に書かれていることを忠実に表現できるか、またどのようにすれば曲の色彩感を出せるかを考える等、本当にやりがいのある体験でした。
他にも、12月には、代官山ヒルサイドテラスで、原田幸一郎先生の門下である優秀な同世代の友達たちと室内楽や弦合奏のアンサンブルコンサートに出演したり、山手ゲーテ座の室内楽コンサートでは、既にプロとして活躍されている方々の中で弾かせて頂いたりと、最高の環境で学ばせて頂けていることに心から感謝しております。
来年もいくつかの音楽祭や演奏会に出演させて頂くことが既に決まっていますので、聴いて下さる方々にヴィオラが素敵な楽器だと思って頂けるよう、ひとつひとつの機会を大切に演奏していきたいです。

これからは、海外への留学も具体的に視野に入っており、語学の勉強に力を入れつつ、音楽の土台もしっかりと固めて、さらに精進していきたいと思っています。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

 


たくさんの出会いが音楽を作る糧になりそうですね。ぜひこれからも研鑽を続けてください!