奨学生レポート RMFレポート インタビュー

チャレンジの秋(丸山瑶子さん)

丸山 瑶子さん/Ms.Yoko Maruyama
(専攻楽器音楽学/musicology)

[ 2016.03.4 ]

学校名:ヴィーン大学

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の丸山瑶子です。
私はヴィーン大学博士課程に在籍し、ベートーヴェンの弦楽四重奏に関する研究に勤しんでいます。

博士論文ではベートーヴェンの様式変化を、同時代の弦楽四重奏様式や室内楽演奏会史との関連から捉え直そうと試みています。

グラーツ学会、発表の様子

<グラーツ学会、発表の様子>

 

奨学生2年目に入り、ヴィーンの生活に漸く慣れてきたところで論文執筆も佳境に入ってきました。秋からの研究生活の中での大きな飛躍は、2つのドイツ語の研究発表を行ったことでした。

 

グラーツ大学、学会場

<グラーツ大学、学会場 >

 
1つはドイツ、ハレで開催されたGesellschaft für Musikforschung (ドイツ語圏全体の音楽学会組織です) の年度学会です。

ここではベートーヴェンの弦楽四重奏と交響曲第6番「田園」を、ベートーヴェンの先輩格にあたるパウル・ヴラニツキの作品と比較し、ヴラニツキがベートーヴェンの創作活動において、言わば模範となっていた可能性を示しました。

特に「田園交響曲」作曲法は細部のモチーフ操作からより広範囲にわたる音楽の構成に至るまで驚くほどよく似ており、指導教授や他の方々も大層興味深いとコメントを頂けた分析結果となりました。

海外発表初挑戦は身が縮まるほど緊張しましたが、セッションは終始和やかで、振り返れば杞憂も笑ってしまうほど大げさでした。

ハレは友人、後輩の留学地でもあったため、同窓会のようで、羽を伸ばして楽しむこともできました。

帰りにはベルリンで当のヴラニツキの作品(発表したのとは別ですが)を取り上げた貴重な演奏会を堪能し、研究と余暇と両方を150%満喫しての家路でした。

 

ハレ学会のプログラムにてヘンデルハウス訪問。モーツァルト時代のピアノを弾かせてもらいました。

<ハレ学会のプログラムにてヘンデルハウス訪問。モーツァルト時代のピアノを弾かせてもらいました。>

 

もう1つは、この報告を書いている直前に終わったオーストリア音楽学会年度学会、博士課程学生のためのシンポジウムです。

こちらでは、弦楽四重奏がベートーヴェンの時代に、私的な音楽サロンや家庭音楽から公開演奏会へ演奏の場所を移したことと、ベートーヴェンの弦楽四重奏様式変化との関係を発表しました。

私的空間と公開の場との音響条件(空間の大きさ、吸音率や残響時間の長さなど)の違いという、物理学の絡む問題に取り組むのは難儀でしたが、指導教授のほか、音響学専門の教授やゼミ生のアドヴァイスあって、慣れない問題も処理することができました。

またハレでの経験も手伝って、ハレの時ほどプレッシャーを感じることなく準備を進められました。
こちらもやはり、心配とは裏腹に非常に面白かった、ドイツ語の発音も良かったとの評を頂け、長い時間かけて調査、分析を進めた甲斐があったと胸をなでおろしているところです。
こうやって一つ一つ、研究成果を発表していけることは何よりの喜びであり、糧となって自分の中に溜まっていくのだと、与えてもらったチャンスに感謝しています。

 

ヴィーンの秋

 

<ヴィーンの秋>

 

今の季節、昼はどんどん短くなり、斜めに射す夕日に照らされる紅葉の美しさにため息が出ます。

ヴィーンではあちこちでクリスマスマーケットが始まる季節です。研究はもちろん大事です。

しかし、ずっと図書館、研究所に閉じこもりがちだった日々も長かったため、これからはヨーロッパの生活にももっと触れながら、日本では得られない、ヨーロッパ独特のもの、人に貪欲に触れていき、今までより多様な視点から、ヨーロッパ文化に属する音楽に近づいていきたいと思います。

 


せっかくの留学生活、さまざまなことを吸収されて研究に活かしてください。今後も楽しみですね。