奨学生レポート RMFレポート インタビュー

夢叶う(木村善明さん)

木村 善明さん/Mr. Yoshiaki Kimura
(専攻楽器バス バリトン/bass baritone)

[ 2016.02.15 ]

学校名:ドイツ国立トロッシンゲン音楽大学大学院

ロームミュージックファンデーション奨学生の木村善明です。

コンサートにて

<コンサートにて>

私が、アンドレアス・ライベンシュピース先生に初めて会ったのは、2013年私がドイツ国立トロッシンゲン音楽大学大学院ドイツ国家演奏家資格コースで2年間の勉強を始めた時でした。

私は彼の下で、ドイツ語の歌詞の内容を極めて深く掘り下げ、また自分の声楽のテクニックを最高に表現できる道を探し続けました。

特に先生から指導を受けたのは、子音と母音の関係性からドイツ語をどのようにすればレガートに歌うことができるか、そしてドイツ語の持つ様々な語感、音、色、詩の解釈でした。

ドイツ歌曲を中心に学ぶことで、オペラの解釈や役の作り方などが大変楽になってきました。

なぜかと言うと、ドイツ歌曲は一人ですべての役を歌い分けなければいけません。

照明や衣装もない、曲によっては3人の登場人物のキャラクターを演じ歌い分けるわけです。

どういう背景で、どういう歴史があり、どういう交友関係、あれゆる可能性を探り、曲に向かうことがいかに大事であるか。

ドイツ歌曲を勉強することはオペラ歌手としてもやっていける芸術的要素を身につけることだと強く実感しました。

 

卒業試験後、アンドレアス先生とネルソン先生

 

<卒業試験後、アンドレアス先生とネルソン先生>

 

日本人の歌手がヨーロッパで歌っていくことの難しさは、先生から常に言われてきました。

言葉の壁だったり、スタイルの問題であったりとヨーロッパ人に比べてスタートラインが違うことは、早くに自分自身痛感したことです。

先生からは常に、「オーディションでは、ずば抜けないといけない。それしか勝つ方法はない」と助言を頂き、その大きな壁を越えるべき先生との二人三脚の日々が始まったわけです。

日頃の留学生活の中でも感じる差別は、特にオペラの舞台では明らかに感じることです。

日本人、何人に関係なく、その人個人をみてくれる、その才能を信じ、一緒に勉強してくれる先生を探すことが一番大事なことであり、そこからやっと戦いが始まるように思います。

その道は本当に険しく、何度となく自分がドイツ人だったらよかったのに、と思ったものです。

しかし、時間が経つにつれ、みんな人間であるわけで、勝負するのはもちろん歌唱力ですが、最後は人間力の勝負なのではと思うようになったのです。

自分にしか歌えない歌を、この人に絶対歌ってもらいたいと思わせる歌を歌うことができるか、そして一番大切なのは、やはりその人の考え方であったり、日々の生活から滲み出てくるものだと強く痛感しました。

歌手である前に人間であり、そして音楽家であり、最後に歌手なんだと実感できたことは、これからの音楽人生の基盤となり、留学生活を締めくくる上で大事なことを気付かされ、そして得ることができました。

 

卒業試験後、ピアニスト、ヨンミンと

<卒業試験後、ピアニスト、ヨンミンと>

 

合計8年間の留学期間を経て、留学当初から目標にしていた歌劇場との専属歌手契約が、研修終了と同時に叶いました。

在学中から、エージェント(音楽事務所)のオーディションに積極的に応募し、30社出して招待が来るのは4社程度の割合でしたが、常に諦めずにオーディションに向かって行きました。

そしてようやく1社、面倒をみてくれるエージェントが決まり、やっと劇場のオーディションに行ける切符を得たわけです。(劇場の専属歌手のオーディション情報は、エージェントにしか入ってこないので、エージャントが決まらないことには何も前に進めない状況なのです。)

夢にみた舞台での生活は、想像を絶するものがあると思いますが、自分らしくまた大きな壁に向かって挑んで行きたいと思っています。

最後になりましたが、このような貴重な勉強の機会を与えてくださり、歌の奥深さや、人としてのあり方や、舞台人としての心構えなど、大事なことをたくさん学ばせていただけました。

そして私自身、歌が大好きだと言うことを、再認識できたことは何にも代えられぬ喜びと感謝をかんじております。これからも人間力を磨いて、一生歌い続けて生きたいと思います。

 

 


ご契約できたとのこと、おめでとうございます!これからがまた大変になるかと思いますが、引き続き素晴らしい歌声で多くの方を魅了してください。