奨学生レポート RMFレポート インタビュー

ヨーロッパでの学び(加藤麻衣さん)

加藤麻衣さん/Ms. Mai Kato
(専攻楽器ソプラノ/soprano)

[ 2015.07.16 ]

学校名:ハンブルク音楽院

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の加藤麻衣です。
日頃より多大なご支援を誠に感謝申し上げます。

mit Cornelia

どんよりと薄暗い冬が過ぎ、ハンブルクにも春がやってきました。

日本との時差が8時間から7時間のサマータイムに切り替わり、今では日の入りが夜の9時過ぎです。

小鳥達のさえずりに毎日聞き惚れながら、いろいろな事に追われながらも伸び伸びと勉強させて頂いております。

こちらでは毎週の基本的な声楽レッスン、コレペティトゥアのレッスンに加え、マスタークラス、コンクール、演奏会等で歌わせて頂いています。
これまで様々な経験をし、ご報告させていただきたい事は山程ありますが、今回はその中でも特に印象に残っている経験の一つをレポートさせていただきます。

 

今年の2月にオーストリアの第2の都市グラーツで開催されたフランツ・シューベルト&現代音楽国際コンクールに参加させてきました。

このコンクールはシューベルト作品と20世紀以後の作品によるコンクールで、デュオ部門(声楽とピアニストのペア)、弦楽トリオ部門、弦楽カルテット部門が開催されました。私は日本人のピアニストとデュオ部門での参加でした。
日本にはデュオのコンクールというのはありませんが、ヨーロッパ、特にドイツでは歌曲分野のコンクールは殆どが声楽家とピアニストのペアで参加する形式です。
これまで、私はソロでのコンクールでしか受けた事がない上に、今回のピアニストとタッグを組んだのもコンクールのわずか3ヶ月前という、大チャレンジでした。

 

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また、準備するプログラムもシューベルトのトラディショナルの作品から現代曲までというレパートリーの幅広さと量の多さは、正直なところ日本のコンクールとは比べ物にならない程、骨を折りました。

またデュオで一組となって音楽を作り上げていく過程は、色々な場面で意見がぶつかる事も多く、ソロとはまた違った難しさもあり、今回非常に勉強になりました。

参加者の殆どはドイツ語圏からで、それに加えてその他の各ヨーロッパ、カナダ、アメリカ、インド、中国、韓国、シンガポール、そして日本等からでした。

東京藝術大学時代の同級生や先輩も参加していて、嬉しい再会がありました。

 

私はコンクール開始日まで2日間だけ、ある用事の為東京に帰らなければなりませんでした。

そのためコンクール開始から1日遅れてグラーツに入り、時差ボケを治す時間も確保できないままの厳しいスケジュールとなりました。

今思い返してみればもう少し違った形で演奏ができたのではないか、という反省点もあります。しかし、その中で音楽の勢いは失わずに演奏できたように思います。

今回のコンクールでも日本人ペアが何組か受けていて、その中で実力は十分にある音楽家もいました。

ただ、残念ながら入賞したのはドイツ語圏の歌手、ピアニストが同圏またはその他のヨーロッパ国籍、という結果でした。

コンクールは水物とはよく言われますが、これは日本人にとって非常に悔しい結果でした。
体格の差も勿論ありますが、それ以上に表現力(特にオリジナリティ)と、テキストをいかに自然に、かつ色彩豊かに表現していくかという点で大きな課題を突きつけられたコンクールでした。
しかし、コンクールで他の世界各国の出場者の演奏や審査員からの講評も直接聞く機会が得られ、大きな刺激を受ける事ができました。

そして新しい現代作品にも多く出会う事ができました。

現代曲の演奏に関してはフランス人が群を抜いて素晴らしく非常に印象的でした。今後の参考にしたいと思わされる演奏でした。

 

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また日頃ハンブルク音楽院でレッスンをして頂いているコルネリア・ツァッハ先生がグラーツ出身という事もあり、わざわざハンブルクから足を運び、コンクール期間中グラーツに滞在し、演奏を聴いて下さいました。

私にとってコンクールで先生に付き添って頂く経験は初めてでしたが、このことは非常に心強く、本番直後にすぐに講評もいただく事ができ、先生からの指導を受けると共に、先生の愛情を深く感じたコンクールでもありました。

音楽的にも人間的にも信頼のおけるツァッハ先生との出会いは今回の留学生活の中での大きな宝の一つと言っても過言ではありません。
また、今回今まで以上に多彩なプログラムを準備した事は、確実に自分自身の力となっていることがその後の自分自身の演奏で感じられるようになりました。このことも大きな収穫だと実感しています。
今回のコンクールの様に、表面的には自分の思う様な結果が出せない事もあります。

しかしその経験も全てが益となって自身の研鑽に繋がっていると思います。留学で得られた収穫の一つです。
今回のコンクールに準備したプログラムは曲を更に追加し、ハンブルクで演奏会を開く予定です。

コンクールで与えられた課題を改善し、聴く方の心に残るより良い演奏を目指したいと思います。

 

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コンクールの帰りはウィーンに少し寄り、シューベルトの生家に足を運んできました。

シューベルトが今まで以上に近い存在になった気がします。留学期間中に更にシューベルトのレパートリーも増やしていけたらと考えています。

 

コンクール後には東京の紀尾井ホールでヘンデル作曲のメサイア公演があった為一時帰国しました。

大学の先輩方でもある素晴らしいソリストの方々、そしてオーケストラ、合唱団の方々との共演もまた一つの経験となりました。

久しぶりに私の歌声を聴いて下さった声楽家の方から、ドイツで良い勉強をしているのですね、という嬉しいコメントも頂き、大変励みになりました。

 

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今後も5月から夏にかけてヨーロッパでいくつものマスタークラスに参加する予定になっています。

自分の為にも先生の期待に応える為にも、そして一音楽家としてより深い音楽が演奏できる様に更にレパートリーの拡大と共に、発声面の強化と音楽的解釈、そして表現の成長を目指し、残された期間一つでも多くの事を習得できる様、日々励みたいと思います。

 

 


デュオ、そして3か月での準備の中でのコンクールというのはまた大変ですね。 実力のある日本人も入賞できなかったというのも、やはり色々な壁があるのですね。 ぜひ今後も様々な経験をされて、研鑽を続けて下さい。