お陰様で博士号が取得できました(喜多宏丞さん)
喜多 宏丞さん/Mr.Kousuke KIta
(専攻楽器ピアノ/piano)
[ 2015.06.11 ]
学校名:東京藝術大学大学院博士課程
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の喜多宏丞です。
ロームミュージックファンデーションのご支援のおかげで、国内外で演奏活動を続けながら博士研究を続け、3月25日にフランク研究の論文と演奏により博士号を取得することができました。本当にありがとうございました。
この一年は、博士課程の最終学年で、研究の集大成であるフランク『交響曲』のピアノ独奏版について、編曲・演奏の両面から完成度を高めてゆく期間でした。
博士論文『セザール・フランク:ピアノ書法の分析に基づくオルガン作品及びオーケストラ作品のピアノ独奏編曲』では、「演奏者として作品(音楽)の魅力を伝える」という観点からピアノ書法やピアノ編曲について考え、「ピアノらしさ」と「フランクらしさ」を両立させながら編曲を作成してゆく過程を詳細に記しました。
偉大な音楽作品をピアノ独奏で表現することへの挑戦は、ピアノやピアノ音楽そのものについても、新たな角度から見つめなおす取り組みでした。
ピアノ音楽の中で一見ごく当たり前に行われている、ちょっとした和音の配置や音域の配分のために、いかに緻密な思考や繊細な感覚が必要か、ということを身をもって体感したことで、作曲家達が楽譜に記した一つ一つの音への共感と愛着が、より深く強いものとなりました。
博士研究と演奏活動の両立は大変でしたが、コンサートやコンクールでショパンやリストといったフランク以外の作品を演奏するときにも、編曲に取り組む以前より高い集中力・表現力を発揮できるようになったと感じています。
<学位審査演奏会>
2月19日の博士学位審査演奏会では、フランク作曲『オルガニスト』より「古風なクリスマス」、『交響曲』ニ短調(ピアノ独奏編曲)、オラトリオ『贖罪』より「交響的間奏曲」(フランク自身によるピアノ4手版)を演奏しました。
編曲・演奏とも最も力を注いできた『交響曲』を奏楽堂の大きな舞台で披露するのはプレッシャーもありましたが、3年がかりで模索し続けてきた表現を音に結実させる喜びもあり、本当に充実したステージでした。
演奏後に、指導教員の先生方から「編曲草稿の完成直後よりもずっとピアノ独奏音楽らしい、自然な響きになっていた」「フランクのピアノの大作が一曲増えた気がして嬉しかった」「フランク特有の“光に満ちた瞬間”が感じられる編曲・演奏だった」などと言っていただき、大きな達成感を得ることができました。
博士論文と学位審査の演奏は、インターネットで公開される予定です。
<卒業式・恩師の角野先生とレッスン室にて>
2015年4月からは、ドイツ・カールスルーエ音楽大学に留学予定です。
10月からは、パリ・エコールノルマル音楽院(横浜国際音楽コンクールグランプリの副賞として授業料全額免除)でも研鑽を積み、帰国後は大学の講師に応募するなど、演奏活動を続けながら音楽教育に携わりたいと思います。
ご支援いただいたロームミュージックファンデーションの奨学生に相応しく、音楽の魅力を広く・深く伝えられる音楽家になれるよう、さらに研究・研鑽を重ねていきたいと思いますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。