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ヴィーン―沢山の楽曲たちと出会う毎日(丸山瑶子さん)

丸山 瑶子さん/Ms.Yoko Maruyama
(専攻楽器音楽学/musicology)

[ 2014.12.15 ]

学校名:ヴィーン大学

ローム ミュージック ファンデーション奨学生の丸山瑶子です。
私は現在、オーストリアのヴィーン大学に留学し、博士論文執筆のための研究に従事しています。

ロンドンの古い楽譜屋さんの前で。

<ロンドンの古い楽譜屋さんの前で。>

 

私の研究はL. v. ベートーヴェンの弦楽四重奏様式の変遷とその意義を、当時の音楽界との関連や同時代の作品との比較分析を通して明らかにしようとするもので、演奏会を中心とする当時の音楽界の調査と楽曲分析を二大柱にしています。

同時代の作品の大半は、現代の楽譜がありませんので、分析のためには18-19世紀に出版されたパート譜から総譜を作る必要があります。

また音楽界について知るためには、当時の新聞批評や貴族の自筆の日記などが重要な情報源となります。

したがって私のこちらの生活は、国立図書館やヴィーン楽友協会アルヒーフ、市庁舎図書館などに通い、19世紀の出版譜や新聞などのオリジナル史料を調査するという毎日です。

日々の訪問で館員さんにも名前を覚えてもらい、もう紙が破れそうな史料と向き合うのも今や当たり前に感じてしまいますが、日本にいたままでは到底不可能な研究ですので、現在の留学生活は極めて贅沢で貴重なものだと感じています。

 

当時の音楽界調査にも重要なベートーヴェン作品を初演場所で演奏するという演奏会シリーズ

<当時の音楽界調査にも重要なベートーヴェン作品を初演場所で演奏するという演奏会シリーズ>

また同時代の作品の一部は、出版譜や自筆譜がヴィーン以外のヨーロッパ諸国に点在しているため、研究調査旅行も必須です。

ドイツなどと比べるとヴィーンは生活費や学費が高く、奨学生に認定いただく以前は、経済的に国外調査は難しく、殆どヴィーンから出ていませんでした。

しかし昨年は奨学金のおかげで漸く国外へ楽譜調査に赴きました。

特にロンドンのロイヤル カレッジ オブ ミュージックではベートーヴェンの自筆譜を初めてオリジナルで閲覧しました。

彼の自筆資料はマイクロフィルムやファクシミリでしか閲覧できないことが多いため、これは非常に感慨深い経験となりました。

 

調査、分析の他に、学会への参加も最新の情報や自身の研究に対する刺激を得るために重要です。

昨年は次の2つの学会で大きな収穫を得ました。

10月、ザルツブルクに於けるモーツァルト学会では、モーツァルトの自筆譜発見に関する発表を聴講し、資料研究の最先端を垣間見ることが出来ました。

11月には日本で自分の分析研究を発表し、貴重なフィードバックを得ることができました。特に後者はあまり知られていない作曲家の作品を、ベートーヴェン作品との関連を考察する形で日本の学会で呈示できたことは、私の研究にとって大きな一歩だったと思います。
こうして2014年を振り返ると、奨学金のおかげで随分とフットワーク軽く動けた年で、奨学生に認めていただけなければ研究の進展は難しかったと感謝するばかりです。
年明けて2015年は、昨年に増して楽譜資料の調査旅行へ積極的に出かけたいと思います。そして作った楽譜を元に楽曲分析を進め、一つ一つ博士論文の一部として文章にする、というのが目標です。

私が扱うベートーヴェンと同時代の作品の殆どは、今では演奏機会に恵まれない作品ですが、その中にはベートーヴェン作品に負けず劣らず興味深い作品が数多く存在します。

自身の研究を通し、こうした作品やヴィーンの作曲家の一人としてベートーヴェンを見る視点を発信することが出来れば、という希望を持ちながら、新年もまた1800年代出版の楽譜のページをめくる毎日です。

 

 


今までなかなかできなかった研究が出来たとのこと、嬉しいですね!様々な発見を期待しています!