パリでのアーティスト生活(齊藤一也さん)
齊藤 一也さん/Mr. Kazuya Saito
(専攻楽器ピアノ/piano)
[ 2013.12.6 ]
学校名:パリ国立高等音楽院
ローム ミュージック ファンデーション奨学生の齊藤一也です。
パリに留学し始めて早くも2年が経ち、新たな3年目を迎えました。
11月ともなると気温もグッと下がり雨のパラツキも多くなるパリですが、人々は雨にも寒さにも負けず、街のカフェのテラスでカフェやホットワインを片手に、賑やかな会話に華を咲かせているパリジャン・パリジェンヌ達の生き生きとした姿はとても印象的です。
僕の住んでいるアパルトマンはモンマルトルの丘にあり、近くには偉大な芸術家達が集ったカフェやレストランが点在します。
その前を通る度にその歴史が培った文化の香りをリアルに感じ取ることができ、思わずため息が出てしまいます。
パリ国立高等音楽院での授業やレッスンは毎回刺激に満ちています。
特にエクリチュール(和声法に基いてコラールや短いフーガなどを作曲するという内容)の授業では、バッハのコラールを研究する度に驚くような発見がたくさんあり、バッハの素晴らしさを改めて感じると共に演奏解釈の面でも役立つ知識をたくさん習得しています。
ミシェル・ダルベルト先生のレッスンは、毎回情熱的で、忠実な指摘とともにジャスチャーや太い歌声を響かせながらわかりやすく音楽を伝えてくれます。
また先生自身が、大変に素晴らしい現役ピアニストであるので、隣で先生の出すダイナミックな音を聴いて、その度量に圧倒されては奮起するという繰り返しです。
時に厳しく、楽譜をきちんと読みこんでいない時には「君はアマチュアだね」と鋭い蜂の一刺しが飛びます。レッスン以外でも年に二回必ずパーティーを開き、みんなで楽しくお酒を飲みながら連弾や即興を楽しみます。
そんな充実した日常生活のおかげもあり、先日東京で開かれた「第82回日本音楽コンクール」では、東京オペラシティタケミツメモリアルにて高関健先生、東京交響楽団さんとプロコフィエフの第3番コンチェルトを共演し、第2位と聴衆賞をいただきました。
久々に日本で会った友人や先生方からは、パリ仕込みの洗練された演奏だったと言っていただき、感激しました。
パリでは、毎日世界中の超一流のアーティスト達のコンサートが開かれており、僕も気になる公演を見つけては、足しげく通っています。
毎回満席に近い聴衆で賑っていて客層も年齢層が広く、皆の音楽に対する理解や意識の高さを窺う度に、流石はクラシックの本場であることをいつも実感させられます。
先日は、ピアニストのメナヘム・プレスラーさんの90歳記念のコンサートに行きました。味わい深さに加えて音は始終輝いていて、最初の一音からアンコールの最後の音が消えていくまで、奇跡とも言えるような音楽の魂の極みを感じさせられました。本当に素晴らしいコンサートで、耳の超えた観客達のスタンディングオベーションにも混じって熱狂してしまいました。
このようにパリというアーティストにとって恵まれた天国のような街で勉強できることを心から感謝すると共に、まだまだ自分の学ぶべき事は山ほどあるということを意識して、更にステップアップしていけるよう、これからも精進したいと思います。