奨学生レポート RMFレポート ミュージックサロン インタビュー

2013年9月(杉本優さん)

杉本 優/Mr. Yu Sugimoto
(専攻楽器指揮/conductor)

[ 2013.11.22 ]

学校名:ウィーン国立音楽大学

こんにちは、ローム・ミュージックファンデーション奨学生の杉本優です。ウィーンに留学してはや1年が経ちました。

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引き続き修行ができるのも、ロームさんの支援あってのことです。

心から感謝するとともに、はやく期待に応えたい気持ちでいっぱいです。
この夏は、サイトウ・キネン・フェスティバル松本の青少年オペラ「ヘンゼルとグレーテル」、3日6公演(!)を担当させていただきました。

ここでは、小澤征爾先生が総監督を務め、世界各地で活躍されている方々が一堂に集い、オーケストラとオペラを柱とし、様々なコンサートが開かれます。

素晴らしいのは、松本に住んでいる子どもたちに、本格的な音楽を聴いてもらおうと、オーケストラとオペラの公演が毎年小澤征爾音楽塾の演奏で開催されていることです。

今年はオーケストラ(ベートーヴェンの第九)でも副指揮として携わらさせていただきました。

初めてのオペラ、そして内容も音楽も素晴らしく、それだけに非常に困難なこの題材に取り掛かることは、駆け出しの私にとって大きな不安がありましたし、現にリハーサルでは、オケや歌手のみなさんに非常に大きな迷惑をかけました。

けれど、コーチ先生方やオケみなさんの助けにより、なんとか形にすることができ、無事に落日を終えられたと思っています。

 

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稽古中、小澤先生が見に来てくださいました。

オペラの山場であり、非常に集中力を要する「お祈りの2重唱」のところで、先生が私の耳元で「指揮するのをやめて、聴くことに集中して!」とおっしゃいました。

やってみると、ずっと苦戦していたのに、歌手、オーケストラが魔法がかかったように音が美しくなり、最上のピアニッシモを奏で始めました。

「なんだ・・・自分がいないほうがいいじゃん」などとと一瞬思いましたが(笑)、その時に再び先生が耳元で「ね、わかる?これを僕がカラヤン先生のところで学んだことなんだ。耳で指揮をすること。これがほんとに大事だから。」とおっしゃってくださいました。

 

指揮台のうえで何もせずただ聴くことに集中する、はじめは演奏が止まってしまうのではと恐れていましたが、この「耳で指揮する」ことが最大に音を集中させ、一体感を生む。その場でそれを肌で感じれたことは、本当に幸せな「衝撃」でした。

このフェスティバルを通じて、たくさんの貴重な経験をさせていただけました。これらの経験を、次のチャンスに生かすべく、引き続き修行を積んでまいりたいと思います。

 

 


オーケストラだけでなく演技をしている歌手も相手にして指揮することはとても集中力が必要でしょうね。でも素晴らしい先生方に囲まれ、その環境の中でオペラ公演を指揮できるということはこれからの指揮活動にとってかけがえのない糧になりますね。 これからも頑張ってください。