浜野 与志男 Yoshio Hamano (ピアノ)

<出演にあたってのコメント>
時代に合うもの、時代の先を行くものを。――― 20代のうちは変わりゆく社会に貢献できるクラシック音楽のあり方を思い描き、憂き世離れした芸術を構想したスクリャービンや、世界が加速度的な変化を迎えた大戦間の時代を生き抜いたラフマニノフやプロコフィエフの音楽に関心が向いていました。

いまや世界が、数年前には思いも寄らなかった激震に耐えています。
広く浅くつながることに慣れてしまった現代の私たちは、いっときのニュースには注目しても、痛み、悲しみ、かたや愛や喜びを心に留め〈深く共感する〉力を失いつつあるのではないか。そう不安に思うたび、まさに私たちに足りないものを音楽が示し、補っていると実感されます。

人々がゆっくりと考えをめぐらせ、他者と深く向き合う時間をもっていた時代に生まれたロマン派の音楽、とりわけシューマン、ブラームスの音楽には共感の力、そして無条件の愛情あるものが表現されていると感じます。

ローム ミュージック フェスティバル2023 in TOKYO、紀尾井ホールでの演奏会が心満たされる時間となるよう願っております。

©井村重人